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コラム

2024/03/29

メタバースにおけるクリエイターエコノミーとは?市場規模や将来性も解説

メタバースにおけるクリエイターエコノミーとは?市場規模や将来性も解説

画像引用元:Unreal Editor For Fortnite

クリエイターエコノミーとは、企業ではない個人がクリエイターとして自身の表現を発信し、それによって収益を得る新しい経済圏を指す言葉です。YouTubeやInstagram、TikTokなどと共に発展してきたクリエイターエコノミーは、すでに世界では10兆円をはるかに超える市場規模となっています。 この記事では、クリエイターエコノミーに注目が集まる背景や市場規模、今後の成長予測、メタバース・Web3・NFTなどの新しい概念や技術との関連性、代表的なメタバースプラットフォームのクリエイターエコノミーについても紹介します。

クリエイターエコノミーとは

クリエイターエコノミーとは、企業ではない個人が「クリエイター」として自身の表現を発信し、それによって収益を上げる「経済圏(エコノミー)」を指します。
かつて「クリエイター」といえば、作家や写真家、イラストレーター、歌手、映画監督といった、ごく一部の表現者だけを指す言葉として使われることが一般的でした。しかし、昨今では、YouTuberやTikToker、インスタグラマー、インフルエンサー、ライバー(オンラインでライブ配信を行う人々)、ゲームクリエイターなど、あらゆるジャンルで創作活動を行う個人をクリエイターと指すようになり、誰もがクリエイターとしてコンテンツや商品を作り、いつでも発表・販売できることが当たり前になりました。日本でも多くの人々がクリエイターとして生計を立てるようになっており、副業や趣味で創作活動をすることで収入を得る人も増えています。SignalFire社が2021年に発表したレポートによると、世界でクリエイターとして活動している約5,000万人のうち、専業としてクリエイターの活動を行い、生計を立てられている人は200万人以上に上ると推測されています。

出典:クリエイターエコノミーとは – 一般社団法人クリエイターエコノミー協会(note)

クリエイターエコノミーが国内で注目され始めたきっかけは、2021年にBASE社やnote社、UUUM社など計39社によるクリエイターの活躍促進や保護、政策提言を目的とした一般社団法人クリエイターエコノミー協会」が設立されたことが挙げられます。インターネットの発展に伴うサービスやプラットフォームの多様化により、大きな企業や団体でなくとも、個人がファンや顧客とつながることで収益を得られるようになりました。
メタバースプラットフォームでも同様に、職種や立場にとらわれず、これまで消費者だった人々が発信者・販売者・生産者にもなる、双方向の経済活動が始まっています。

クリエイターエコノミーの市場規模と将来予測

一般社団法人クリエイターエコノミー協会は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社と共同で、2022年10月17日に「国内クリエイターエコノミーに関する調査結果」を発表しました。

■クリエイターエコノミー市場規模

出典:日本初!国内クリエイターエコノミー調査結果を発表 – 一般社団法人クリエイターエコノミー協会(note)
注) 1ドル=145円(2022年10月11日為替レートに基づく)として算出

同調査によると、国内クリエイターエコノミーの市場規模は1兆3,574億円に上ることが明らかになりました。なお、2021年に実施されたNeoReach Social Intelligence APIとInfluencer Marketing Hubの共同調査によると、世界のクリエイターエコノミーの市場規模は約1,042億ドル(1ドル=145円とすると15.1兆円)と推計されており、国内クリエイターエコノミーがその約1割に相当します。また、同市場に関わる人口も調査時点で世界総人口の約23%、ほぼ4人に1人まで達していると見られています。

■クリエイターエコノミー市場規模の将来予測

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

さらに、国内の潜在クリエイター数は2,200万人に上ると推計され、国内の経済成長に寄与する観点でも大きなポテンシャルを秘めていることがわかりました。今後も同程度のペースで市場が拡大した場合、クリエイターエコノミー市場規模は2034年に10兆円超に拡大すると見込まれており、個人の自己実現のみならず、経済成長のエンジンとなる可能性を秘めています。

クリエイターエコノミーの拡大要因

クリエイターエコノミー拡大の要因として、多様なプラットフォーム・収益化手法の登場により、クリエイター個々のスキルや志向に沿った活動が行いやすくなったことが挙げられます。また、政府の働き方改革の一環として、副業・兼業をはじめとした多様な働き方が推進されており、専業クリエイターだけではなく副業としてクリエイター活動に取り組む層が増加したことなどが考えられます。加えて、コロナ禍での可処分時間が増加したことでクリエイターにおいては活動開始の契機となり、消費者にとってはコンテンツ消費量が増加し、市場拡大を押し上げたと考えられます。

■国内クリエイターエコノミーの拡大要因

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

また、クリエイターエコノミーの拡大は、日本に限ったものではなく、海外でも拡大が続いています。国内と海外のクリエイターエコノミーの拡大要因を比較すると、海外は「個人の有料利用率」と「インフルエンサーマーケティング普及度」の2点において、国内より先行しています。規制や文化の相違もあるため一概には言えないものの、ユーザーや広告主となる企業に対して、各サービス・プラットフォームの特性や、クリエイターが自らの“人となり”を適切に伝えていくことは、クリエイターエコノミーのさらなる成長につながるものと考えられます。

■海外のクリエイターエコノミーの拡大要因

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

メタバース・Web3・NFTなどの新しい概念や技術との関連性

クリエイターエコノミーは、「Web3.0」や「メタバース」などの経済トレンドと親和性が高いことや、「インフルエンサー」や「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」といったマーケティングトレンドと関連し、生活者の生活者による経済の創出という点では「DAO(分散型自律組織)」といった社会トレンドと関連しています。
経済産業省は「Web3.0時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る調査事業」として実証実験イベントを立て続けに実施しており、直近では2023年1月に「メタバースファッションコンテスト」を開催。同事業のロードマップでは、日本の強みである「クリエイターを軸にした国際競争力を有するクリエイターエコノミーの創出・拡充」の実現をありたい姿(目標)としています。

4-1. メタバースとの関連性

一般的なオンラインゲームでは、換金目的のプレイヤーの参入を防ぐため、アイテムや通貨をプレイヤーが現金化することを規約によって禁じられていますが、メタバースプラットフォームでは参加者が自らコンテンツを開発・提供するため、参加者がクリエイターとして収益化を図るケースが期待できます。
たとえば、Robloxでは、クリエイターが手軽にゲームを開発できるよう開発ツールを無償で整備・公開しており、開発されたゲームの利用状況に応じて、クリエイターに収益が発生するように仕組みが整えられています。趣味でRobux(Robloxのプラットフォーム内通貨)を稼ぐクリエイターからキャリアを積んだクリエイターまで数百万人ものクリエイターが活動し、仮想世界における新たなクリエイターエコノミーを構築しています。

4-2. Web3との関連性

Web3とは、ブロックチェーン技術を基盤とした分散型インターネットを表す概念のこと。「オンラインの世界で巨大テック企業が独占している権力を、ブロックチェーン技術によって個人に分散する」というコンセプトを大まかに持ちます。
これまでのクリエイターエコノミーは、GoogleやYouTube、Instagramといった各種プラットフォームが大きな力を握り、「クリエイターがコンテンツを作成し、企業が儲かる」という構造が作られ、ユーザーやファンの行動データはすべてプラットフォーム側に依存してしまっていました。Web3はこうしたプラットフォームの権力を分散させ、クリエイターがファンと直接つながり、収益を獲得できるような仕組みを実現しつつあります。

4-3. NFTとの関連性

Web3.0と共に注目すべき技術の一つとして「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」が挙げられます。NFTとは、ブロックチェーン上のデジタルデータが唯一無二の存在であることを証明する技術のことです。
たとえば、NFTアートのコミュニティでは、熱心なファンによる二次創作活動が活発です。二次創作作品を「ファンアート」と言い、既にNFTアートとして存在している作品を原作として、オリジナリティを加えることで別の作品として制作した作品のこと。
二次創作では著作権のライセンスや違法転売などが問題視されますが、作者(著作権保有者)によってはガイドラインに従う範囲の二次創作を許可している場合があり、その作品に関しては二次創作を行うことが可能です。中には、「CC0」といって創作における著作権の全てを放棄し、自由に作品の拡張や再利用が可能としているものもあります。NFTを活用することで二次流通における版権者に対する収益還元も可能となり、「創作が創作を生む」新たな経済圏が生まれてきています。

メタバースにおけるクリエイターエコノミー

メタバースに必要不可欠なのは、体験に直結するコンテンツや空間そのものを生み出すクリエイターの参入です。代表的なメタバースプラットフォームでは、誰もがクリエイターになれる世界を実現するツールの提供や収益化する方法を用意しています。

5-1. Roblox

画像引用元:Roblox

Robloxはクリエイターをサポートするための各種ツールやサービスに加え、大勢のクリエイターが収益を得られるよう収益方法を多様化し、誰もがクリエイターになれるプラットフォームを構築しています。
米Robloxは、2023年9月8日(現地時間)開催の年次開発者会議Roblox Developers Conference(RDC2023)で、生成AIチャットbot「Roblox Assistant」(以下、アシスタント)を発表。アシスタントはRobloxがオプションとして提供するツールで、質問への回答、コードの生成と説明、アセットの挿入や配置によるシーンへの入力などの提案を提供することで、バーチャル空間をより速く作成できるようにします。アシスタントは、Robloxにおける既存の生成AIの活用を基盤としており、初心者や経験の浅いクリエイターが参入する障壁を下げると同時に、実績のあるクリエイターが面倒な反復作業を自動化し、迅速に作品の規模を拡大できるようにします。
また、Robloxでは誰でも収入を得られる方法を幅広く提供しており、仮想空間内での課金、エンゲージメントベース・ペイアウト、バーチャルアイテムの作成と販売、アフィリエイトなど、クリエイターがコンテンツを収益化する方法がいくつも用意されており、その中から最適なものを選択することができます。
Roblox の成長は、クリエイターとプレイヤーの強力なエコシステムによって推進されてきました。「Robloxでの経済活動」に関するビジョンによると、Robloxのクリエイターは2022年に6億2,400万ドルを稼ぎ、32億回以上のバーチャル取引があり、2022年に最も稼いだクリエイター10人の平均収入はそれぞれ2,300万ドルでした。今後Robloxでは、クリエイター自身がマネタイズするための「定期購入」などのオプションを強化し、バーチャルワールドにおける新たなクリエイターエコノミー構築を目指しているそうです。

5-2. Fortnite

画像引用元:Unreal Editor For Fortnite

フォートナイトを開発・運営する米Epic Gamesは2023年3月22日、「Unreal Editor for Fortnite」(以下、UEFN)の提供と、収益の40%を還元する新プログラムを発表しました。UEFNは同社が開発した強力なゲームエンジンである「Unreal Engine5」を利用し、UEFNに搭載された数多くの機能により、フォートナイトで作成できるゲームの自由度が大きく広がりました。また、島のコンテンツを公開したクリエイターの貢献度に応じて、フォートナイトの純利益の40%を分配することになりました。フォートナイトの純利益とは、アイテム販売などで得た粗利益から、サードパーティの支払い処理による手数料等を差し引いたものです。このプログラムは、クリエイターにとって大きなチャンスとなっています。彼らは自分の才能やアイデアを活かして収益を得られます。 では、どのように評価して収益を割り当てるのでしょうか。そこで用いられるのが「エンゲージメント配当(Engagement Payouts)」です。エンゲージメント配当とは、島の制作に関して行われるプレイヤーに対する報酬制度です。エンゲージメント配当の計算方法は、プレイヤー数とプレイヤーの定着度に分けられます。
・プレイヤー数:フォートナイトの新規プレイヤー数と、フォートナイトに復帰したプレイヤー数
・プレイヤーの定着率: プレイの継続率および再度プレイするプレイヤーの数
また、2023年5月31日はエンゲージメント配当に関する最新情報として、新たにプレイ時間も指標として追加されました。
・プレイ時間: プレイヤーが島で過ごした時間
これらの変更により、年間配当が10万ドル以上となるクリエイターは200人を超えると言われています。

5-3. ZEPETO

画像引用元:ZEPETO Studio

ZEPETOクリエイターとは、ZEPETO内のファッションアイテムやワールドを制作したり、ライブ配信を行ったりして収益を得ることができるユーザーのことです。世界中に数百万人のZEPETOクリエイターが活動しており、約4.6億人ものユーザーに向けてアイデアやコンテンツを共有しています。ZEPETOアカウントを持っていれば誰でも無料でZEPETOクリエイターになることができ、クリエイターエコノミー活性化の原動力となっています。
ZEPETOでは次の機能により収益を得ることが可能です。
・アイテム販売収益:ショップ内にあるアイテムをユーザーが購入することで収益が発生します。
・ワールドアイテムを販売収益:スタジオで作成したワールドアイテムをユーザーが購入することで収益が発生します
・ZEPETOライブ※プレゼント(応援):リスナーがライブ中にライバーにZem/エフェクトアイテムをプレゼントすることで収益が発生します。

※ただし、ライブ配信を行うには一定の条件を満たしている必要があります。

ZEPETOでは、ユーザーがさまざまなコンテンツを制作、販売できるツール「ZEPETO Studio」を提供しています。ZEPETO Studioを利用してワールドを作成し、自分で作ったワールドでアイテムを販売して収益を得ることも可能です。審査後にコンテンツが問題ないと判断されると自動的に公開され、全てのユーザーがアクセスできる状態になります。3Dモデリングソフトを使用する方法は、PC環境が必要なことや専門ソフトの知識がいることなどから初心者の方には難易度が高いため、テンプレートエディターで作成する方法も用意されています。ZEPETO studioの累積加入者数は343万人にのぼり(2023年8月時点)、累積販売数は1億8,400万個を突破しています(2022年9月時点)。

まとめ

クリエイターエコノミーは従来のBtoC(消費者向け)ではなく、個人と個人のやりとりで構成される経済圏です。売買の対象となるのは「個人の表現」であり、そこではだれもが売り手(クリエイター)になり得ます。クリエイターエコノミーの発展は、企業に対しても大きな影響を与えるものとなるだけに、その市場拡大の行方と新たな展開に引き続き注目していきたいです。
トランスコスモスは、様々なパートナーと提携する過程でクリエイターを活用し、Fortnite(フォートナイト)、Roblox(ロブロックス)、ZEPETO(ゼペット)の制作ができる体制を整備しております。クリエイターを活用したメタバースの構築をご検討されているお客様企業ならびにご担当者様は、お気軽にトランスコスモスにお問い合わせください。

  • 著者

    メタバース情報局編集部

    メタバース情報局 by transcosmosはトランスコスモス株式会社が運営する法人向けメタバース情報メディアです。メタバースを活用したビジネスの事例やノウハウ、最新情報、バーチャル体験など、メタバースの魅力をお届けします。ビジネスシーンにおけるメタバースの活用や、導入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。

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