2024/12/25
世界最大級のメタバースプラットフォームとして知られる「Roblox」。毎日7,950万人(※1)がアクセスするこのプラットフォームでは、プレイヤー自身がクリエイターとなって作った様々なオンラインゲームが日々エクスペリエンスとして公開されています。ゲーム版YouTubeと称されることもありますが、近年ではゲームに留まらない様々な用途へと利用の幅が広がっているほか、企業による活用も積極的に行われています。ユーザーが作ったエクスペリエンスに仕込めるマネタイズ手段が豊富に提供され、独自の通貨Robux(ロバックス)を使用したアバターやアイテムを取引できる仕組みも整っており、Roblox独自の経済圏が生まれています。
本対談では、Robloxクリエイターのお二方と、企業のRoblox活用方法や今後の可能性、バーチャル世界と現実世界をリンクさせる仕掛けなどについて、3回にわたって対談をお届けします。
※1 2024年8月 Roblox社発表による
たんじさん
2010年より株式会社スクウェア・エニックスにてFINAL FANTASYシリーズ制作エンジニアとして従事。FF14、FF16などのシステム制作を手掛ける。2023年に独立し、子どもたちにプログラミングを教える活動を行いながら、Robloxの個人・受注開発を行う。Roblox開発教材なども制作し、Robloxに関して制作から教える活動まで幅広く取り組む。子供とゲームをする毎日をエンジョイしている。
シンジesk.さん
1992年より日本電気株式会社(以下、NEC)のデザイン部門で、ユーザーインターフェイスのデザインと使いやすさの評価業務に従事。PCプリインストールアプリなどのUIを手掛ける。退職後、2023年より3DCG技術を活かすためにゲーム制作を始める。NeXtreme Studioでは主に2D・3Dアセット、UIの制作を担当。観葉植物への水やりと、メダカたちにエサをあげるのが日課。
NeXtreme Studioとは 教育×クリエイティブのコミュニティ『学びラボ』にてRoblox共同制作したことを機に、たんじ・ シンジがRoblox制作スタジオ「NeXtreame Studio」を共同で設立。「NeXtreame」には、 「Next(次のレベルの)」「Extreme(極限の)」制作活動を行っていくという意思が込められています。 |
光田 刃 トランスコスモス株式会社 C X事業統括 D X推進本部 メタバース推進部 部長
2009年トランスコスモス株式会社入社。コンタクトセンター事業のサービス設計・運営、企画、営業を経験後、責任者としてマーケティング部門を立ち上げ。2022年よりWeb3やメタバース関連の新規事業開発・立ち上げに注力し、2023年2月にメタバース推進部を新設。現在はフォートナイト、Roblox、ZEPETOを活用した法人向けコンテンツの開発・提供を開始し、メタバースを活用したビジネス、マーケティングの責任者を務める。講演実績として、『第2回 メタバース総合展夏』XR・メタバース総合展特別講演「企業のメタバース導入 〜目的、効果、クリエイターとの共創から生まれる価値〜」、『Metaverse Japan Summit 2023』セッション「メタバースを利用した経営戦略〜メタバースビジネスの社会実装」などメタバースのビジネス創出に向けた啓発活動を進めています。
光田:Robloxのメインターゲットは9〜16歳で、公式からは17歳〜24歳のZ世代が急成長しているとの発表もされていますが、実際に年齢層が上がっている実感はありますか?
たんじ:周りのことでいうと、大人がどんどんプレイするようになっているなという感覚があります。Robloxが日本でどんどん盛り上がってきているフェーズだと思うので、大人の比率が上がっている、という印象は強くありますね。子どもたちは相変わらずやっているとは思うんですけど。
光田:大人でも楽しめるゲームがあったり、子どもでしか楽しめないゲームもあったり、そこがまたRobloxの強みでもあったりしますよね。
たんじ:そうですね。
光田:企業がRobloxのプレースを作った場合、重要になってくるのがデータだと思うのですが、Robloxではどういうデータが取れるのでしょうか?
たんじ: Robloxはアナリティクスがかなり充実しています。年齢層別、性別、国別、言語別、アクセスデバイスといったユーザー分析もできるほか、新規ユーザーがどこから来たかや、そのCV率も測定できます。エンゲージメント分析では、DAU(デイリーアクティブユーザー数)、初めて利用したユーザー数、セッション数、合計プレイ時間数など、ユーザーがどのくらい自社のコンテンツに時間を使っているかがわかります。また、リテンション率では、新規訪問の後に、24時間以内/1日/1週間/1ヶ月以内にバーチャル空間に戻ってきたユーザー数も測定可能です。収益化分析では、課金ユーザー数や課金ユーザーCV率 、 ARPPU(課金ユーザー1人あたりの平均収益)なども見られます。
光田:他のメタバースプラットフォームは、まだそこまでデータが取れていないので、そこはRobloxの強みですよね。
光田:クリエイターが17歳以上を対象としたコンテンツを公開できるようになって、先ほどユーザーの年齢層が上がってきているという話もありました。YouTubeで子どもが見るコンテンツと大人が見るコンテンツが違うように、Robloxでも子ども向けのコンテンツだけでなく大人向けのコンテンツが充実していけば、もっとおもしろくなるし、強みになるかもしれないですよね。企業がプレースを作る際に、子ども向けコンテンツと大人向けコンテンツを分けて、うまく活用できるようになればおもしろいな、と。
光田:企業案件を開発する際に、企業側に求めることはありますか?
たんじ:Robloxで何か出したい、アクセスを取りたいというオーダーではなく、企業様がどういったものを実現したいかが、ある程度具体的になっていると助かるなというのはあります。コアなマスト要件は何なのか、作るための要件がある程度固まっていると、作る側としてはすごく作りやすいので、具体的であればあるほど助かります。
光田:そうですよね。僕自身も常にバランスを考えて企画提案しています。つまらないものを作ったら誰もプレイしてくれないので、企業の伝えたいことだけを形にすればいいわけでもないですし、だからといって単純におもしろいゲーム性を追求すればいいわけでもない。そこは弊社が、企業として何を伝えたいのか?実現したいのか?を明確化して、ゲームとのバランスをうまく調和して世に出していきたいと考えています。
たんじ:はい、よろしくお願いします。
光田:Robloxやフォートナイトなどのゲーム分野から見るメタバースの可能性についてお聞かせください。僕自身の考えだと、今でいうと若年層がメインなので、若年層ではメインのプラットフォームになり得るが、SNSなど他のプラットフォームに取って代わるかというと、そうではないのかなと思っている感じです。
たんじ:光田さんの仰っていただいた通りで、すべて取って代わるというのは、現実的に想像できない段階かな、と。今後はシフトしていくというか、今から若い層がどんどん使っていくので、現在の若い層の年齢が上がっていき、色濃くなっていくのはあると思います。
シンジesk.:私、YouTubeの商品レビューを結構見るんですよ。スピーカーの専門家の人の話を聞いて、どのメーカーのスピーカーがいいのかを知って、この商品いいねって買いたくなる。そういうのをRobloxでやると、どんな感じになるのかな、と。たとえば、YouTubeで美味しいお菓子を食べていて、「このお菓子美味しいよね」と言っているから自分も買ってみようという発想をするのだとすると、Robloxで美味しいお菓子の紹介があって、このお菓子買ってみたいとなるならば、広告じゃないけど、広告の役割をするかなって、今ちょっと思いましたね。
光田:没入型広告やメタバースECは、ユーザーとブランドの関係性を大きく変える力を持っていますよね。見るだけでなく、体験させて想起させることができるので、広告としての活用はあり得ると思っています。ユーザーにとって価値のある体験を提供し、ブランドとの絆を深めることができるプラットフォームが、メタバースマーケティングを牽引していくことになるでしょうし、企業にはメタバースという新たな領域に適応し、ユーザーとの新しい関係性を構築していくことが求められますよね。Robloxの取り組みって、その先駆けとなる事例だといえると思います。
光田:「NeXtreame Studio」の今後の目標や展望があればお聞かせください。
たんじ:はい、拡大していきたいと思っております!今年まずは2人でいろいろな案件を受けて、資金的にもお仕事的にも波に乗せて、波に乗ってきたらぜひ拡大していきたいな、と。いずれは法人化していきたいなと思っております。
光田:拡大することによって、どういうダグ付けをしていきたいですか?
たんじ:そうですね。「Robloxでハイクオリティな世界を作れる」というのが元々スタジオのコンセプトでもあるので、制作したプレースのクオリティやアクセスで実績を上げていって、「このスタジオならいいものが作れる」というふうに受注案件としても高い評価を得られるようにしたいです。それと同時に、自分たちの作りたいプレースを作って、できればグローバルヒットを狙っていきたい。1つヒットを生み出すと、ある程度ネームバリューも出てくると思うので、自社コンテンツとしてもヒットを出して、自社としてのブランディングもしていきたいみたいなところですかね。
シンジesk.:スタジオの色があったらいいなとは思いますね。ハイクオリティなものを作れる、そして、〇〇といえばNeXtreame Studioだよねってなるとおもしろいし、強いかなと思いますね。
たんじ:うんうん。
シンジesk.:それがまだ何なのかは見えて来ないですけども、やがてはそういうのが欲しいですよね。
たんじ:そうですね。強いジャンルみたいなのは、ちょっと狙いたい(笑)。
光田:はい、強いジャンルを作っていただいて、今後とも弊社の企業案件にご協力をお願いできればと思います。ありがとうございました!
たんじ・シンジesk.:こちらこそ、ありがとうございました!
(対談の内容は2024年4月時点のものです)
著者
メタバース情報局編集部
メタバース情報局 by transcosmosはトランスコスモス株式会社が運営する法人向けメタバース情報メディアです。メタバースを活用したビジネスの事例やノウハウ、最新情報、バーチャル体験など、メタバースの魅力をお届けします。ビジネスシーンにおけるメタバースの活用や、導入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
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