2024/04/12
画像引用元:Apple
Apple Vision Proは、米国時間2023年6月5日に開催された年次開発者会議「WWDC2023」において発表されました。2024年2月2日、遂にAppleから初の空間コンピュータ「Apple Vision Pro」が発売。魔法のような体験を実現する、Apple のテクノロジーの集大成ともいえる製品として、世界中から大きな注目を集めています。
本記事では、Apple Vision Proの概要や価格と日本での発売時期、新機能、Apple Vision Proでできることをわかりやすく解説します。
※製品の纏め記事です。情報等は公式から参照していますが、正確な情報等を知りたい方はApple公式サイトにお問合せください。
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2024年2月2日にアメリカで発売された「Apple Vision Pro」は、米Appleが開発した初の空間コンピュータ。従来のコンピュータとは異なる全く新しいインターフェイスを持ち、三次元の空間そのものをインターフェイスにしてしまうのが空間コンピュータです。これは従来の技術で言えば、MR(Mixed Realityの略。複合現実)に相当します。
Apple Vision Proは、従来のディスプレイの枠を超え、視線やハンドジェスチャー、声などで操作する直感的なデバイスです。世界初となる空間オペレーティングシステム「visionOS」を搭載しており、ユーザーのいる空間に、映像や写真、ゲームといったデジタルコンテンツが物理的に存在しているかのように感じられます。
同社のCEO であるTim Cook氏が、「かつてMacがPCを切り開き、iPhoneがモバイルコンピューティングを切り開いてきたように、Vision Proは空間コンピューティングを切り開く」とコメント。MacとiPhoneという一時代を築き上げた製品に連なるデバイスであることを強調しました。
Appleのプレスリリースでも「デジタルコンテンツを現実の世界とシームレスに融合しながら、実世界や周囲の人とのつながりを保つことができる革新的な空間コンピュータ」と説明されている通り、既存のMRデバイスとの違いは、現実を遮断するのではなく、実世界や周囲の人とのつながりを重視していること。コントローラーは不要で、携帯できる外付けバッテリーもあるため、Vision Proを装着しながら気軽に部屋の中を歩き回れます。
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Apple Vision Proは2024年2月2日に米国で販売開始され、日本を含むその他の国や地域では2024年後半からの販売を予定しています。価格は3499ドルから(約524,850円から※。ただし、日本市場での価格は未定)。
2024年2月2日の発売はアメリカ在住者をターゲットとした販売のため、購入にアメリカ版Appleアカウントが必要なことや、受け取りはアメリカ国内の店舗、またはアメリカ国内への配送のみとなっています。Apple Vision Proを購入するためには、基本的にアメリカに渡航する必要があり、通販で購入することはできません。
※2024年3月5日現在、1ドル150円で換算した場合
Apple Vision Pro はコンパクトなウェアラブルデザインでありながら、群を抜いた演算性能を実現できるよう設計されています。直感的な操作と没入感を生むパススルー機能を実現するため、ハードウエアにも新開発したテクノロジーが盛り込まれています。まずは、主な機能を解説します。
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ディスプレーは、iPhoneのピクセル1つ分に64ピクセルを詰め込んだ高精細マイクロ有機ELを開発。両眼の部分に設けた2つの切手サイズのディスプレイは合計2,300万ピクセルを備え、驚異的な解像度と色を実現します。片目当たりのピクセル数は4Kテレビを超えるといいます。また、ディスプレイをユーザーの視界全体に広げるため、3枚構成のカスタムレンズを設計し、レンズシステムも新開発しています。この技術的な躍進とカスタムレンズの組み合わせが、とてつもない鮮明さと驚くような体験を届けます。
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Apple Vision Proには多数のセンサーが搭載されています。プレスリリースによると、立体視カメラのほかに環境センサーのカメラも含めて、12のカメラ、5つのセンサー、6つのマイクを搭載。外側には2つの高解像度カメラ、手のジェスチャー認識に使うカメラ、周囲の環境をリアルタイム3Dで認識するためのセンサーなど。
内側のセンサーは、ユーザーが今どの部分を見ているのかを認識する「アイトラッキング機能」センサーのほか、生体認証として新たに瞳の虹彩を認識する「Optic ID」を搭載しています。
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さらに、独自に設計されたデュアルチップを備えたカスタムのAppleシリコンを搭載しています。一般的に、ゴーグル型デバイスは、センサーで得た情報をディスプレイに送信するタイムラグによってVR酔いを起こすとされていますが、Vision Proは新たに開発された「R1」チップにより、ほとんど遅れの生じないリアルタイムな体験を実現。
Mac Book Airなどに既に搭載されている「M2」チップに加え、新たに開発された「R1」チップが、12のカメラ、5つのセンサー、6つのマイクからの入力をリアルタイムに処理し、12ミリ秒以内に画像をディスプレイにストリーミングします。
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また、史上最も先進的な空間オーディオシステムを搭載しており、サウンドがユーザーの周囲から聞こえてくるような感覚を生み出します。
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さらに、両耳のすぐ横に配置されたデュアルドライバー搭載のオーディオポッドが、環境に合わせてパーソナライズされたサウンドを届けます※。
※パーソナライズされた空間オーディオを利用するには、パーソナルプロファイルを作成するためのTrueDepthカメラを搭載したiPhoneが必要です。
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現実世界とシームレスにつながるための機能「EyeSight」を搭載。Apple Vision Proを装着してバーチャル空間に完全に没入している時でも、EyeSightの機能により、周りの人たちとのつながりを保つことができます。
Apple Vision Proを装着しているユーザーに誰かが近づくと自動で作動し、ユーザーが相手を認識できるようデバイスをつけたまま周囲が見通せるようになり、同時にユーザーの両目をデバイス上に映し出します。 これは従来のゴーグル型デバイスの課題であった「現実からの遮断」や「周囲から見た時の違和感」などを緩和するものです。Appleのデモ動画の中でも、Apple Vision Proを装着したまま家族や同僚と話したり、子どもと触れ合ったりする様子が何度も描かれ、Apple Vision Proを装着しながら日常生活を送ることを想定していると考えられます。
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ユーザーは、右上の「Digital Crown」を回転させることで、自分がどれだけ現実世界に意識を向けるか、あるいは、バーチャル空間に完全に没入するか、バーチャル空間への没入度を自由にコントロールできます。
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また、Apple Vision Pro本体の重さは600~650g。重量のあるバッテリーを本体から切り離し、ポケットなどに入れて使うデザインにしたことで軽量化に成功しました。
アルミニウムで覆われた外付けバッテリーは、ポケットに滑り込ませてポータブル電源として使用できます。電源接続時には1日を通じての使用が可能であり、外部バッテリーを接続することで最大2時間の使用が可能です。
注目のApple Vision Proですが、具体的にどのようなことができるのでしょうか。先述の空間コンピューティングを生かした、さまざまな機能がすでに発表されています。Apple Vision Proの大きな強みのひとつが、macOS、iOS、およびiPadOSでの経験や資産を活かしたApple製のアプリや機能が使えること。当面はこれらのApple製アプリの利用が中心になることが想定されますが、Zoomなどの一部アプリはいち早く対応することを表明しているため、今後できることが増えていきそうです。
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新たに設計された「visionOS」は、3Dインターフェイスを採用しており、現実世界にあたかも存在するかのようにデジタルコンテンツを再現します。
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空間のどこにでも設置でき、空間上に好きなサイズに調整したアプリケーションを並べて表示でき、お気に入りのアプリへのアクセスや、マルチタスク作業ができます。
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また、「Magic Keyboard」と「Magic Trackpad」に対応しているので、持ち運び可能な大きなプライベートの4Kディスプレイとして使うことも可能です。MacをApple Vision Proにワイヤレスで接続して使用することもできます。
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コントローラー無しでの空間体験操作を実現するため、Apple Vision Proではユーザーの目と手、声によりコントロールする世界初となる入力操作システムを採用。視線を向けるだけでアプリをブラウズしたり、項目をつまむようにタップして選択したり、手首を上下左右にさっと動かしてスクロールしたり、声で文字を入力することも可能です。
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超高解像度ディスプレイにより、擬似的に幅30メートルにも及ぶスクリーンを表示させることができます。また、Apple Vision Proの新しい空間オーディオに対応した180度の高解像度録画を提供する「Apple Immersive Videos」も視聴できます。
片目あたり 4K テレビよりも多くのピクセルを備えているため、自宅のソファでも長時間のフライトでも、どこにいても素晴らしいコンテンツを楽しむことができます。
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Apple Vision proには、3Dの写真やビデオに対応するApple初の新しいカメラが搭載されています。ユーザーはiCloudの写真ライブラリ全体にアクセスして、写真やビデオを実物大のスケール感と鮮やかな色彩、詳細なディティールで再現できます。
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iPhoneで撮影した美しいパノラマ写真はユーザーの周囲を包み込むように広がり、まるで写真を撮影した場所に戻ったかのような感覚を生み出します。
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Apple Vision proはFaceTime通話にも対応しており、通話に参加している全員を等身大で映し出します。一方、通話中の相手にはPersonaとして映し出されます。Personaとは、Appleの最も先進的な機械学習テクノロジーにより生み出されるデジタル表現で、ユーザー自身の姿、顔や手の動きがリアルタイムに再現されます。
ユーザーは、他ユーザーと一緒に映画や写真を見たり、アプリウィンドウを共有したり、同じドキュメントで同時に共同作業することも可能です。
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visionOS専用のApp Storeが用意されているほか、iPhoneやiPadで使われている既存の数十万のアプリもスムーズに動作します。また、100以上のApple Arcadeのゲームを現実世界よりも大きなスケールで体験でき、なおかつ臨場感のあるオーディオで楽しむことができます。また、別途ゲームコントローラーにも対応しています。
ゴーグル型のデバイスを巡っては、メタバースに社運を懸けるMetaが2023年6月1日に新型となる「Meta Quest 3」を発表、韓国のサムスン電子も2023年2月、米Google、米Qualcomm(クアルコム)と共同でデバイスを開発するプロジェクトを発表しています。相次ぐ大手の参入で、今後の注目テクノロジーの1つに躍り出る可能性があるでしょう。
Apple Vision Proは価格が高いこと、本体がやや重くて長時間の装着は疲れること、今後いかにアプリを充実させるかといった課題はあります。しかし、空間コンピュータというコンセプトのとおり、写真や映像といったコンテンツを楽しむだけでなく、実生活や仕事で使うことを想定しているように見えます。また、「没入しすぎずに現実との関わりを大切にするべきだ」というAppleからのメッセージが形になったものが、このApple Vision Proと言えるのではないでしょうか。
著者
メタバース情報局編集部
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