2024/03/27
画像引用元:Minecraft
全世界に1億人以上のアクティブユーザーを持つ「Minecraft(マインクラフト)」は、「Fortnite(フォートナイト)」「Roblox」と並び世界3大ゲームとして知られる超人気コンテンツです。これら3つのプラットフォームは、単に「ゲーム」というにはあまりに巨大すぎるメディアであり、将来的にはGAFA※などのWeb2時代のプラットフォーム企業らを凌駕するかもしれないメタバースとして期待されています。 そこで今回は、マインクラフトの概要や人気の理由、教育版マインクラフトの活用事例まで、詳しく紹介します。
※今まで米国経済を牽引してきたGAFA(Google、Amazon、Facebook(現Meta)、Apple)ですが、2023年以降、MATANA(Microsoft、Amazon、Tesla、Alphabet(Google)、NVIDIA、Apple)へと高成長を遂げるビッグテックの勢力図が変わろうとしています。
Minecraft、通称“マイクラ”は、3Dブロックで構成された仮想空間の中で、ものづくりや冒険が楽しめるゲームです。「ワールド」と呼ばれる仮想空間の世界には、草原や湿地、砂漠、雪原など現実世界を模した多様な地形が広がっていて、プレイヤーはその中で、石や土、木や鉄などさまざまな種類のブロックを集めて道具や建物を作ったり、知らない場所に冒険に行ったりして楽しみます。
そんなマインクラフトは、2011年にスウェーデンのゲームスタジオ「Mojang」とゲームクリエイターのマルクス・ペルソン(通称ノッチ)によって開発されたオープンワールド型サンドボックスゲームです。マイン(=mine)が鉱山、クラフト(=craft)が手仕事・手作業を意味し、マインクラフトは砂場で自由に遊べる感覚と似ていることから、サンドボックス(=砂場)ゲームと呼ばれています。サンドボックスゲームはゲームのジャンルの一つで、プレイヤーに明確な達成すべき目標やストーリーを用意せず、提供した世界観の中で自由に行動するタイプのゲームのこと。他に代表的な例として、「あつまれ どうぶつの森」などが挙げられます。
現在はMicrosoftが運営しており、PC版マインクラフトは累計2.38億本モバイル版は1.3億本が販売されており、マインクラフトの中国語版は、無料とはいえ4.25億個もダウンロードされています。2016年に4,000万人だったマインクラフトの月間アクティブユーザー数(以下、MAU)は、コロナ前の2019年には9,000万人になり、2023年第4四半期には1.65億人を突破し、6年間で4倍以上のMAU数に成長しています。
なぜ、マインクラフトはこれほど人気があるのでしょうか。
マインクラフトはゲームといっても、勝敗や得点で相手を打ち負かすといったゴールはありません。ゲーム中で“次はこれをやってみよう”という説明や指示もありません。あるのは、目の前に広がる仮想空間のワールドだけ。そこで何をするかは自分次第です。家を作ったり、知らない場所を探検したり、他のプレイヤーが作った建造物を見に行ったり、やりたいことを自分で決められます。この自由なゲーム設定が子どもたちのクリエイティビティを刺激しています。
また、ひとつのワールドに複数人が同時にアクセスできる「マルチプレイ」も魅力です。複数のプレイヤーがひとつのワールドに同時に入り、一緒に冒険や建築を楽しむことができます。一人では小さな家しか作れなくても、仲間と一緒に作業をすることで、巨大な建築物や街づくりにも挑戦できるのです。このように、子ども同士のコミュニケーションやコラボレーションが生まれやすいのもマインクラフトの特徴であり、人気の理由と言えるでしょう。
マインクラフトの楽しみ方は、大きく2つあります。
ひとつは「サバイバルモード」といって、自分の命を守りながら、ワールドを開拓し生活を豊かにする遊び方です。サバイバルモードでは、プレイヤーに体力や満腹度が設定されており、資源や食料も自分で確保しなければなりません。木を切って、道具や家を作って食べ物を栽培したり、モンスターから身を守ったりと、徐々にワールド内でできることを増やしながら自分の世界を築きあげていきます。
もう一つは「クリエイティブモード」といって、さまざまな色やテクスチャーの3Dブロックを組み合わせて建造物を作る「建築」に専念できる遊び方です。サバイバルモードのようなプレイヤーの体力や満腹度などの概念がなく、すべてのブロックやアイテムが使い放題となっています。自分のイメージした家を建ててインテリアを工夫したり、歴史的建造物や鉄道、街などを作ったりと、さまざまなものづくりが楽しめます。さまざまな作品がYouTubeやSNSに投稿されており、実際にワールドにアクセスして探検できるので、そこからマインクラフトに興味を持った方も多いかもしれません。
さらに、マインクラフトの楽しみの一つである「MOD(モッド)」は、新たな世界やおもしろいアイテムを追加することができます。MODはマインクラフトの開発者ではなく、世界中のさまざまな有志の手で作成されており、今もなお新しいマイクラの遊び方として次々と生み出されています。
マインクラフトには、「Java版」と「統合版」の2つのエディションがあります。
「Java版」は、PC(Windows、Mac、Linux)向けにリリースされています。Java版はMODの導入が可能であり、プレイヤーがゲームを自分の好みに合わせてカスタマイズが可能で、動画投稿やゲーム実況がしやすいことがメリットです。デメリットとしては、スペックの低いPCでは動作が重くなることや、コントローラーでのプレイには対応していないことが挙げられます。
一方、「統合版」は、スマートフォンやタブレット、Nintendo Switch、PS4、Xbox One、Windows 10など複数のプラットフォームで動作する統一されたバージョンです。コントローラーでのプレイに対応しており、異なるプラットフォーム間でのマルチプレイが可能となります。MODが使えないために機能が制限されることや、ゲーム機のマルチプレイに一部制限があることがデメリットとして挙げられます。
マインクラフトにハマってしまう子どもたちは、「いつか自分もModを使ってみたい」という思いを持ち、そこからプログラミングに興味を持つケースが多いようで「Java版」が人気です。
ゲームとして大人気のマインクラフトですが、海外では、ゲームとしてはもちろん、学習教材としても高く評価されています。2016年には、プログラミングや化学の学習要素を追加した「Minecraft:Education Edition」(以下、教育版マインクラフト)が教育機関向けに発表されました。保護者の方の中には、「ゲームで勉強するの?」と思われるかもしれませんが、課題解決型学習やプログラミング学習に教育版マインクラフトを使う教育者が増えています。
教育版マインクラフトはこれまで、小学校や中学校、高校など、Microsoftが定めた教育機関とそのユーザーに利用が限られていましたが、2021 年5 月よりプログラミング教室や学習塾、非営利団体、課外活動など学校以外の教育機関にもライセンスが提供されるようになりました。「体験版レッスン」は誰でも利用可能ですが、本格的に利用するには学校や組織が管理するMicrosoft365のアカウントが必要となります。
教育版マインクラフトでは、ひとつのワールドに40人の児童生徒が同時に入って共同作業ができます。その際、ワールド全体を俯瞰的に見ながら、安心・安全に学習を進められるよう支援するのが「Classroom Mode」です。児童生徒の居場所を把握したり、全員を一か所に集めたりできるほか、全員を一時停止する機能、チャットや危険な3Dブロックを禁止する機能、相手にダメージを与えない機能など、すべて教育者が管理できるようになっています。
教育版マインクラフトのマルチプレイは、同じ学校や組織のMicrosoft 365 アカウントを持っているユーザーに限定されます。またマルチプレイを始めるときも、参加コード(またはリンク情報)を知っているユーザーしか入れず、学校外の不特定多数のユーザーが無作為に入ってこられない点も、安心して取り組めるポイントです。
教育版マインクラフトには、「Code Builder for Minecraft:Education Edition」(以下、コードビルダー)と呼ばれるプログラミング環境が用意されています。マインクラフトの世界でプログラミングすることによって、手動では時間のかかる巨大な建築物をあっという間に仕上げることが可能です。コードビルダーでは3つのエディタが用意されており、特に親しまれているのはブロックでコマンドを組み立てる「MakeCode」、これとは別に「Python」と「Tynker」を選ぶこともできます。また、初心者向けにもっと簡単にプログラミングを体験できる「Hour of Code」というレッスンも用意されています。こちらは、与えられたミッションをプログラミングによってクリアするといった形で学習を進められます。
教育版マインクラフトには、学校の授業や特別講座などで使用できる多様なワールドテンプレートが用意されています。具体的には、数学や化学、コンピューターサイエンス、アートデザインといった教科の学習に使えるワールドから、デジタル市民権、多様性、気候変動などをテーマにしたワールドまで、マインクラフトを通してさまざまな学習課題に触れることが可能です。
教育版マインクラフトにしかない限定のアイテムで、子どもたちが喜ぶのは「カメラ」と「ポートフォリオ」です。カメラでワールドの中を撮影したり、マルチプレイの時に友だちと集合写真を撮ったり、通常のマインクラフトにはない楽しみ方があります。ポートフォリオは、その名の通り自分がカメラで撮影した写真の保管場所となります。ほかにも、ガイドや注意事項を提示するための黒板や、ワールドを案内してくれるNPC(Non Player Character)がそこかしこに登場するのも教育版ならではと言えるでしょう。
代表例は、文科省のプログラミング教育実証校にも指定されている「立命館小学校」の取り組みです。この事例は、英語、図工、プログラミングが同時に学べる事例として、国内外で高く評価されています。 京都市の立命館小学校では、6年生に向けて「立命館小学校の地元、京都の観光名所を案内しよう」をテーマにした課題解決型学習が実施されました。グループで協力しながら仮想世界のワールドの中に「平等院鳳凰堂」や「金閣寺」など京都の歴史的建造物を作り、エージェント(案内役)に案内させるプログラムを組み立てます。観光名所の事前調査、建造物の設計や制作、案内するキャラクターのプログラミングなど、各プロセスをグループで計画し、進めていきました。
画像引用元:立命館小学校6年生のグループがマインクラフトで作成した平等院鳳凰堂
さらに、マインクラフトで建造物を作って終わりではなく、最終的にはインド、アメリカ、マレーシアの小学校に作った作品を送り、現地の子どもたちが実際に体験した感想をフィードバックしてもらって修正作業に生かす徹底ぶり。もちろん、海外の小学校とのコミュニケーションは英語で行います。立命館小学校の課題解決型学習の狙いは、「プログラミングを体験する」「トライ&エラーの姿勢を身につける」「個人の働きと周りの協力どちらも大事であることを認識する」という3点で、こうした正解がひとつとは限らない課題解決型学習に年間を通して取り組むことで、21世紀型スキルの育成を目指しています。
また、他の小学校ではマインクラフトを使って「地域の活性化をめざし、観光客が訪れる街をつくろう」といった授業や、文化祭に訪れた子どもたちが楽しめるように「学校の校舎をマインクラフトで再現しよう」という学習に取り組む学校もあります。
多くの教育者は、マインクラフトの教育的効果を、子ども同士のコミュニケーションが圧倒的に増えることだといいます。たとえば、“マインクラフトで金閣寺を作ろう”という場合、子どもたちが一番むずかしく感じるのは、完成形の共有です。最初から同じ完成形を描いているわけではないので、マインクラフトで共同作業を進めるためにはコミュニケーションが欠かせません。設計図やラフスケッチでアイデアを可視化するなど、マインクラフトを通してコラボレーションの仕方を学んでいきます。また、作業の効率的な進め方、役割分担の大切さ、スキルの異なる友達をどう巻き込んでいくか、協力し合う大切さなども学びます。
子どもたちに親しまれている「マインクラフト」は、今やゲームの域を超えて、協働学習やプログラミング教育、オンライン授業といったさまざまな場面で活用が広がっており、世界中でその教育効果に注目する教育者は増えています。一方で、日本ではまだまだ、その存在を知らない教育関係者が多くいます。ご自身の自治体や学校での導入の参考にしてみてはいかがでしょうか。
著者
メタバース情報局編集部
メタバース情報局 by transcosmosはトランスコスモス株式会社が運営する法人向けメタバース情報メディアです。メタバースを活用したビジネスの事例やノウハウ、最新情報、バーチャル体験など、メタバースの魅力をお届けします。ビジネスシーンにおけるメタバースの活用や、導入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
この記事をシェアする
関連記事