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コラム

2024/03/26

VRChatとは?注目される理由や企業の活用事例を徹底解説

VRChatとは?注目される理由や企業の活用事例を徹底解説

画像引用元:https://hello.vrchat.com/

VRChatとは、ユーザーがオリジナルのアバターを作成し、VR空間内で他ユーザーとの交流やイベントを楽しめる、代表的なソーシャルVRプラットフォームです。ユーザー数が多く、2023年1月には同時接続ユーザー数が約46,500人に到達しました。近年では、個人だけでなく企業や自治体などの参入も見られ、ビジネスにも活用されています。
そこで今回は、VRChatの概要や特徴について、企業のビジネス活用事例とともにわかりやすく解説します。VRChatをビジネスに活用したいと考えている方、必見です。

VRChatとは

米VRChat Inc.が2017年から開発・運営している「VRChat」は、通常のSNSと同様、VR上でいろいろな人と交流ができる世界最大のソーシャルVRプラットフォームです。
友達と雑談したりゲームをしたり、空間上にあるビデオプレイヤーでYouTubeを流してみんなで観ながらわいわいしたり、学校の放課後のような雰囲気があります。
ユーザーは好きなアバターの姿でチャットや音声通話、身振り手振りなどを通じてコミュニケーションを取ることが可能です。コミュニケーションはVRChat内に存在する無数の「ワールド」と呼ばれるバーチャル空間内で行われ、ユーザー自身がワールドを作成したり、そこでイベントを開いたりすることもできます。また、ユーザー主体のイベントや公式公認の有料イベントなどが数多く開催されており、その熱量は年々高まっています。
VRChatはPCからもアクセス可能ですが、Meta QuestなどのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)からアクセスすることで、まるで同じ部屋にいる人と会話しているような体験をすることができます。昨今ではVRデバイスを通じてメタバースにアクセスするユーザーが大幅に増加しており、MAUは400万(2022年Q1時点)を突破。世界を代表するVR/メタバース空間に成長しています。

VRChatでできること

VRChatにはさまざまな楽しみ方があり、ユーザーが思い思いに過ごせるのが魅力です。多種多様な空間でユーザー同士の交流が活発に行われ、多くのイベントが開催されています。VRChatひとつで多くの楽しみ方ができるのがポイントです。

2-1. 世界中のユーザーと交流できる

VRChatは名前の通り、ユーザー同士で交流をするのが基本的な楽しみ方です。ユーザーが多い上にコミュニティも活発であるため、世界中のユーザーと気軽につながれます。主に使われている言語は英語ですが、日本人向けのワールドなら日本語でも楽しめます。
また、マイクを使うことで周囲のプレイヤーとボイスチャットを楽しめるほか、自分の体の動きをアバターに反映させ、ジェスチャーで交流することも可能です。そのため実際にその場にいるような感覚が強く感じられます。

2-2. ユーザーがアバターやワールドを作成できる

アバターは、VRChat内におけるユーザーの分身のような存在です。ユーザーは独自のアバターを自由に作成でき、アバターを使ってワールドを巡ります。一方、ワールドとは、VRChat内で展開されている空間のことです。VRChat内には、企業や自治体が作成した大規模なものから個人が作った小規模なものまで、多種多様なワールドが存在します。ユーザー同士の交流の場になったり、観光を楽しめたりと、ワールド内ではアバターが好きなように過ごせます。
また、アバターだけでなくワールドもユーザー自身が独自に作成でき、他ユーザーに楽しんでもらったり、そこでイベントを開催したりすることができます。このように、ユーザーが自由にアバターやワールドを創造し、仮想世界を盛り上げていけるのも、VRChatの楽しみ方の1つです。

2-3. バーチャル空間でのイベントに参加できる

VRChatでは、随時イベントが開催されており、バーチャル空間でのイベントに参加するのもVRChatならではの楽しみ方といえます。大規模イベントの代表例は、HIKKYが主催する3Dアバターや3Dモデルを自由に鑑賞・購入できるVR展示即売会「バーチャルマーケット」や、サンリオが主催する「SANRIO  Virtual Fes」などがあります。ユーザーが主催するイベントでは、初心者向けのチュートリアルツアーをはじめ、音楽ライブやクラブ、カフェなどの店舗を模したイベント、学術的な知見が得られる交流会、VR演劇まで、さまざまなイベントが開催されています。
また、近年では、VTuber(バーチャルYouTuber)の活動場所としても注目されています。特に英語圏VTuberグループ「NIJISANJI EN」は配信中にプレイするだけでなく、公式ワールドを複数制作・公開しています。さらにそのワールドでファンとの交流イベントを開催するなど、積極的に活用しています。

VRChatの2つのモード

VRChatは、VRという名がついていますが、VRChatを楽しむ上でVR専用デバイスは必須ではありません。VRChatには以下の2つのモードがあり、それぞれのモードの特徴と使い方について解説します。

3-1. PCだけで楽しめるデスクトップモード

デスクトップモードは、PCでVRChatを楽しめるモードのことです。ゲーム配信プラットフォームである「Steam」とVRChatをインストールすることにより、VR専用デバイスがなくてもVRChatを使用でき、気軽にVRChatの世界を味わえます。ただし、VRChatを快適に楽しむためには、ある程度スペックの高いPCを用意する必要があります。
VRモードのような臨場感は味わえませんが、マウスとキーボードを操作するだけで基本的なコミュニケーションは十分に可能。VRヘッドセット不要で手軽に始められる点が、ユーザーから支持を集めています。

3-2. より没入感を味わえるVRモード

VRモードは、VRヘッドセットとPCをつないでVRChatを楽しめるモードのことです。さらに「Meta Quest 3」であれば、PCを接続しなくても単体で楽しむことができます。 デスクトップモードに比べて、ワールドを360度体験できるため、実際にワールドの中にいるかのような感覚を味わえます。VRヘッドセットとVRコントローラーとUni-motionを組み合わせることでフルボディトラッキングを実現し、身振り手振りを使ってコミュニケーションがと取れるのも魅力です。高い没入感でVRChatを満喫したい方には、ぜひVRモードをおすすめします。

有料サブスク導入でメタバース経済圏は本格化

これまでVRChatでは、クリエイターが制作したコンテンツから収益を得ようとした場合、BOOTHやPatreonといった外部サイトやプラットフォームを使用する必要がありました。しかし、2023年11月23日、VRChatがクリエイターに課金できる新機能「Paid Subscriptions(有料サブスクリプション)」の導入を発表しました。VRChatが約半年前の5月19日に発表し話題になった「クリエイターエコノミー」構想の第一弾です。これは、VRChat内のクリエイター(アバター・ワールド制作者、イベント主催者、パーフォーマーなど)がVRChat上で直接収益を得られるようになり、VRChatの仮想空間内に本格的な経済圏(エコノミー)を作っていこうというものです。
公式発表によると、有料サブスクリプション機能を通じて、ワールド内の特別な部屋(VIPルーム)をアンロックする権利を付与したり、支援者の頭上に特別なアイコンを表示したりできるそうです。また、イベント主催者であれば、開催するイベントの優先アクセス権を付与できます。現在、VRChatのユーザーは自由にサブスクリプション購入が行える状態ですが、一部のクリエイターのみ有料サブスクを提供可能で、徐々に対象を拡大する予定とのこと。
なお、有料サブスクリプションを通じて得られた収益の分配率は、約50%がクリエイターに支払われ、Steam・Meta・Google Playなどの配信プラットフォーム手数料が30%、VRChat運営とパートナーが20%を得る仕組みです。

VRChatのビジネス活用事例

VRChatは、企業や自治体の活用も広がりを見せています。ワールド内で自社製品をモチーフにしたアイテムを表示したり、自社が伝えたい企業ストーリーに沿った世界観を再現したりするなど、仮想空間上でのブランド体験や商品・サービスのプロモーションを実施しています。ここからは、VRChatがどのようにビジネスに活用されているのか、具体的な活用事例を紹介します。

5-1. サンリオ「SANRIO Virtual Festival 2024 in Sanrio Puroland」

画像引用元:SANRIO Virtual Festival 2024 in Sanrio Puroland

株式会社サンリオと株式会社サンリオエンターテイメントは、2024年2月19日から3月17日にかけ、毎年好評の世界最大級のメタバースイベント「SANRIO Virtual Festival 2024 in Sanrio Puroland」を開催されました。本イベントは、ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」にて開催され、期間中はいつでも楽しめる本格メタバースイベントです。
前回、総来場数230万超え(各配信プラットフォーム視聴、ワールドアクセス総数等を元に算出)の「SANRIO Virtual Festival」が、今年はバーチャルテーマパークにパワーアップ。“バーチャルサンリオピューロランド”内に出現した巨大空間にバーチャルアーティスト、バーチャルクリエイター、サンリオキャラクターらが出演し、サンリオファンからバーチャル上級者までみんなで盛り上がれるバーチャル音楽パフォーマンスのほか、今年はコンテンツ量もボリュームアップし、バーチャル音楽フェスの枠を超えた“VRテーマパーク”に進化します。VRChatのほか、SPWN、YouTube、REALITY、ZEPETOでも開催され、パレードなどは無料でも見ることができます。

5-2. HIKKY「バーチャルマーケット2023 Winter」

画像引用元:Virtual Market 2023 Winter

2023年12月2日〜17日にかけて、世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット2023 Winter」が開催されました。株式会社HIKKYが主催するバーチャルマーケット(Virtual Market、略称:Vket)とは、メタバース上にある会場で、アバターなどの3Dアイテムやリアル商品(洋服、PC、飲食物など)を売り買いできるVRイベント。2018年より開催し、世界中から100万人を超す来場者を誇り、ギネス世界記録™※も保持するメタバースの先駆け的イベントです。
Vket2023 Winterでは、ロンドン、沖縄、渋谷/原宿をパラリアル化した3会場を企業出展会場として展開し、高島屋、Beams、ロート製薬、ヤマハ発動機、日本中央競馬会(JRA)、愛知県豊田市など、計23の企業や自治体などが出展。さらに、Vket2023 Summerに引き続き、リアルイベントも実施しました。商品売買の他にも会場内で乗り物に乗ったり、接客を受けたり、音楽ライブに参加するなど、メタバースならではの体験も提供。さらに来場者間で音声によるコミュニケーションが可能で、現実世界で一緒に街を巡っているかのような臨場感が楽しめます。
3Dデータ商品の個人間売買を目的に始まったVketですが、近年ではメタバース事業に参入したい大手企業によりリアル商品の販売も充実し、VRコマースの新たな可能性を創出しています。

※バーチャルリアリティマーケットイベントにおけるブースの最多数としてギネス世界記録™に認定

5-3. CASIO「G-SHOCK THE RIDE」

画像引用元:CASIO公式サイト

カシオ計算機は、VRChatでのコンテンツ第2弾として、耐衝撃ウオッチ“G-SHOCK”の耐久試験を体験できるアトラクション型コンテンツ「G-SHOCK THE RIDE」(Gショック ザ ライド)を2023年12月8日より公開しました。
同社は、VRChat上に仮想店舗「G-SHOCK STORE」を2023年10月にオープン。“G-SHOCK”のカスタマイズ体験や作成したモデルのアバターへの試着など、メタバースでのコンテンツを提供し、新たなユーザーとの接点を広げています。
今回は、実際に開発拠点の羽村技術センターで行われている“G-SHOCK”の耐久試験をベースにしながら、未来の“G-SHOCK”の耐久試験を体験するというストーリーです。テーマパークのようなライドアトラクションにアバターで乗り込み、仮想空間ならではの非現実的な演出を楽しめます。アトラクションとしての楽しさだけでなく、唯一無二のタフネスを保証するため厳しい耐久試験を行う、現実の“G-SHOCK”の世界観を表現した空間に仕上げています。

5-4. アダストリア「メタバースファッション第7弾」

画像引用元:ADASTRIA

株式会社アダストリアが展開する公式WEBストア .st(ドットエスティ)は、2022年にドットエスティオリジナルアバター「枡花 蒼」、「一色 晴」の販売開始後、多くのユーザーから支持を集めています。
メタバースファッション第7弾は、2023年11月24日より、人気3DCGクリエイター「てんぷらぱすた」、「LYRA」とコラボし、女性に人気の「Heather」、「Andemiu」、「mysty woman」の最旬コーディネートを3ブランド同時リリース。「BOOTH」にて販売開始しました。リアルと同様、洋服の着こなしが楽しめ、イベントやお出かけが増えるシーズンにぴったりなコーディネートに仕上がっています。
また、販売に合わせて12月3日よりVRChat内でドットエスティファッション展示会「meet the .st」を開催し、コラボクリエイターを招いたトークショーを開催しました。

5-5. 大丸松坂屋「VRChat向け3Dアバター」販売

画像引用元:株式会社大丸松坂屋百貨店

老舗百貨店の大丸松坂屋百貨店は、株式会社HIKKYが主催するVRイベント「バーチャルマーケット」に仮想店舗「バーチャル大丸・松坂屋」をスタートし、以後5回出展し、常連企業としても知られています。また、VR空間上への出店にとどまらず、VTuberなどを接客担当として招き、VR空間上での接客などにも力を入れており、メタバースが流行する以前からバーチャル空間の活用に果敢にトライしてきました。
そんな大丸松坂屋百貨店が新たなメタバース事業として、百貨店業界初となる「3Dアバター販売」へと参入しました。VTuber/3Dモデラーのもちひよこ氏をはじめとする、未知の可能性に挑戦する14名のクリエイターを起用し、VRChat対応のオリジナルアバターを5体制作しました。販売先はVRChatユーザー御用達のECサイト「BOOTH」。また、販売に先駆け、VRChat内の特設ワールドにて試着会も開催しています。
さらに、同社は2023年10月26日に、米VRChat Inc.とパートナーシップ契約を締結。このパートナーシップ締結により、今後もメタバースに進出する食品やファッション企業、行政機関などに向けて、3Dモデルの制作や、イベント・集会の開催サポート支援などを行っていくそうです。

5-6. 日産自動車「NISSAN EV & Clean Energy World」

画像引用元:NISSAN公式サイト

2023年1月20日、日産自動車株式会社はVRChatに、新ワールド「NISSAN EV & Clean Energy World」を公開しました。日産自動車はこれまでVRChatにさまざまなワールドを公開し、継続的なメタバース上での取り組みを続けています。そして今回公開されたワールドは、電気自動車(EV)を活用したサステナブルな暮らしを体験し、再生可能エネルギーとEVの生活への活用を学ぶことができるゲームワールドとなっています。
日産自動車は2021年にVRChat内にバーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」を公開して以降、新型軽電気自動車「サクラ」のお披露目イベントなど、バーチャル上での新たなコミュニケーションの場を広げるなど、既存の枠組みを超えた新たな情報発信に取り組んでいます。

5-7. モスバーガー「MOS BURGER ON THE MOON」リニューアル

画像引用元:株式会社モスフードサービス

VRChat上にモスバーガー初の仮想店舗「MOS BURGER ON THE MOON」を2022年9月14日にオープンしました。本店舗は、限定商品“月見フォカッチャ”に合わせて月面空間に登場し、VRChatへアクセスできれば24時間365日来店が可能。本店舗は実際のモスバーガーの店舗を忠実にメタバース上に再現しており、テラスでは地球を眺めながら食事を楽しめます。また、 “月見フォカッチャ”をはじめとする4商品を製造するメ無料体験会を9月14日〜16日の3日間、都内3店舗で実施しました。
実は、モスバーガーのメインの利用者層は30代〜40代の男性であり、この客層を拡大するため30代〜40代の女性と若年層へリーチをかけるべく、新しい商品の展開を模索していたとのこと。新たな客層開拓と長年の顧客の要望に応えるべく、2022年に満を持して“月見フォカッチャ”で月見商戦に参加を決めたそうです。
その上で、“月見フォカッチャ”を目的の客層へリーチするべく打ったプロモーションが、「美少女戦士セーラームーン」とのコラボCMと、VTuber星街すいせいさんと音楽プロデューサーTAKU INOUEさんの音楽プロジェクト「Midnight Grand Orchestra」とのタイアップでした。
一方で、「メタバースでは飲食物は実際に食べられない」「現物をどうやってお客様のもとに届けるか」という課題も挙げており、リアル店舗での体験会開催に踏み切ったのも、メタバースで体験してから実際に食べてもらうという流れを生み出したかったからとのことです。

5-8. VRChatで楽しむ「湘南ひらつか七夕まつり」

画像引用元:SHONAN HIRATSUKA VIRTUAL TANABATA STREET

神奈川県平塚市の恒例イベント「第70回 湘南ひらつか七夕まつり」の開催に合わせ、「湘南ひらつかバーチャル七夕ストリート」がVRChat上で2022年7月8日〜7月10日の期間限定で開催され、地方自治体イベントにおいてVR活用を実現しました。
七夕まつりは新型コロナウイルスの影響で2年間の開催中止となり、2022年の開催では県外からの集客や飲食店の出店もできない状態でした。そこで、七夕まつりをメタバース空間で再現し、誰もが安心安全に楽しめることを目指したプロジェクトを実施。色鮮やかな七夕飾りをVRChat上に再現して、日本だけでなく世界中からも七夕まつりを楽しめるようになりました。

まとめ

コミュニケーションツールとしてだけではなく、最先端のメタバースプラットフォームとしても注目を集める「VRChat」。アバターを作成してさまざまなワールドをめぐり、他のユーザーと交流したりイベントに参加したりできるソーシャルVRサービスです。
近年では、企業や自治体がVRChatの特長を活かしたブランド体験やイベント開催、バーチャルアイテムの販売、自社商品・サービスのプロモーションを行っている事例も多く見られます。

  • 著者

    メタバース情報局編集部

    メタバース情報局 by transcosmosはトランスコスモス株式会社が運営する法人向けメタバース情報メディアです。メタバースを活用したビジネスの事例やノウハウ、最新情報、バーチャル体験など、メタバースの魅力をお届けします。ビジネスシーンにおけるメタバースの活用や、導入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。

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