2023/12/08
画像引用元:Roblox
ゲーム版YouTubeとも評される「Roblox(ロブロックス)」は、2025年現在、世界200以上の国と地域からアクセスされ、1日あたりのアクティブユーザー(DAU)はおよそ8,500万人を超えています。ユーザーは平均して1日あたり3時間前後をプレイに費やしており、年々ユーザーベースも拡大し続けています。
Robloxは2004年に米国で設立され、子どもから若年層を中心に人気を獲得してきましたが、近年では大人のプレイヤーやクリエイターの参入も顕著です。2021年3月にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場して以降も、さらなる資金調達や技術投資が進み、プラットフォームの拡大が加速しています
Robloxの大きな特徴のひとつは、ユーザー(クリエイター)が自由にゲームを制作・公開できる点です。プログラミング経験の少ない初心者でも比較的簡単に開発が始められるうえ、Robloxの仮想通貨である「Robux(ロバックス)」を用いて、ゲーム内アイテムやアバター関連のデジタルアイテムを売買できます。こうしたエコシステムにより、学生や個人クリエイターが大きな収益を得る事例も増加しています。
さらにここ数年で、世界的ブランドのNIKEやGUCCI、GIVENCHYといったファッション系のみならず、Walmart、Spotify、Tommy Hilfigerなどの企業が相次いで公式ワールドを常設・または期間限定で展開してきました。2024年頃からは家電や車関連企業、飲料メーカーなど、異業種からの参入も増え、メタバース上での新たな顧客体験づくりやコミュニティ形成に成功しています。
たとえば、 Walmartは「Walmart Land」や「Universe of Play」と銘打った仮想空間を公開し、ブランド認知とコマースを連動 Chipotleは期間限定イベントでクーポンやデジタルグッズを配布 Samsungは製品体験や限定デジタルアイテムの配布を行うワールドを開設 など、メタバース戦略の一環としてRobloxを活用する企業が急速に増加しています。 近年は、Robloxが高度な3D技術やジェネレーティブAIを活用したクリエイター支援ツールを続々と導入し、企業にとってさらに魅力的なプロモーションの場となっています。
「Roblox(ロブロックス)」は、ゲームを題材としたユーザー生成コンテンツ(UGC)の提供プラットフォームです。他のユーザーが公開したゲームをプレイしたり、自身でゲームを制作して公開したりできる点から、よく「ゲーム版YouTube」とも評されます。 ゲーム内ではリアルタイムでのユーザー同士のコミュニケーションが活発に行われているほか、アバターやアイテムを売買する独自の経済圏(メタバース内経済)が成立しており、世界を代表するメタバースの1つといわれています。
2004年:「DynaBlocks」としてベータ版を展開
2005年:「Roblox」に名称を変更
2006年9月:正式サービスを開始 創設当初から子どもや若年層を中心に人気を集めていましたが、2020年代に入ってからはアバターやワールドのクオリティが向上し、年齢層も幅広く拡大。
2021年3月にはニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場を果たし、大規模な資金調達を経て開発・運営体制をさらに強化しています。
2020年頃からユーザー数が急増した背景には、新型コロナウイルスの感染拡大による対面コミュニケーションの制限が挙げられます。特に若年層がRoblox上のメタバースで友人と会ったり遊んだりする機会が増えたことで、さらに利用が広まったとされています。
・総ユーザー数は4億人以上(推計)
・世界200以上の国と地域からアクセス
・1日あたりのアクティブユーザー(DAU)は約8,500万人超
・ユーザーの約半数が13歳以下のα世代を中心とした若年層 2023年頃から大人のユーザーやクリエイターも急増し、現在ではファミリー層や大学生・社会人など、より多様な年齢層が参加しています。
Robloxの特徴として、専用ゲームエンジン「Roblox Studio」でユーザー自身がゲームを制作し、Roblox上で公開できる点が挙げられます。2022年初頭には約950万人がクリエイター登録していましたが、2025年時点では1,200万人以上が登録していると推定され、さらに増加傾向にあります。 プログラミング未経験者でも比較的簡単に開発を始められることから、個人クリエイターが作品を生み出す土壌が整っており、この“創り手”が多い環境こそがRobloxの強みの一つになっています。
ユーザーの分身となるアバターで、世界中のクリエイターが公開したゲームを遊べるのもRobloxの魅力です。 2023年3月末時点で累計3,200万タイトルを超えていましたが、2025年時点では累計4,000万タイトル超に到達したと推定されます アドベンチャー、アクション、RPG、FPSなどさまざまなジャンルを基本無料でプレイ可能 対応デバイスはスマートフォン(iOS・Android)、PC(Windows・MacOS)、Amazonデバイス、Xbox One、PlayStation 4・5などに加え、2023年後半からはMeta QuestシリーズなどのVRデバイスにも対応が進み、さらに遊びの幅が広がっています。
Robloxの最大の魅力は、ユーザーが自由にコンテンツを創作・公開できる点です。公式が提供するツール「Roblox Studio」を使えば、プログラミングの知識が多少あれば誰でも簡単にゲームを作成できます。
農業web3コミュニティ『Metagri研究所』未来の農業シミュレーター
ジャンルの多様性:アクション、パズル、シミュレーション、音楽ゲーム、対戦ゲームなど ユーザー投稿型:ヒット作が生まれると爆発的にユーザーが増え、制作者は収益を得ることも可能
RobloxはSNS的な要素が強く、友達とのチャットやイベント参加などを通じてコミュニティが形成されます。2023年以降はボイスチャット機能の導入も進み、フレンドやクラスメイト同士で音声を使ったコミュニケーションが可能になりました(年齢認証が必要)。
2024年頃からは、生成系AI(Generative AI)を活用したゲーム開発支援が実装され、コードの自動補完やオブジェクトの自動生成などの機能が追加されました。プログラミング初心者でも、視覚的な操作や簡単な指示で高度なゲームや3Dモデルが作成しやすくなっています。
それぞれの特徴について、わかりやすく解説していきます。
Robloxには、自分以外のプレイヤーをフレンドとして登録できる機能があります。登録方法はとても簡単で、フレンドのユーザー名を検索して、友達申請を送り、承認されれば登録完了です。また、プレイしているゲーム内からも友達申請が可能です。フレンドリストに登録した友達とは、Roblox内でチャットをすることができ、同じゲームでマルチプレイをすることも可能です。
Robloxには、チャット機能やフレンド登録機能などSNSとしての機能も充実しているので、リアルの友達やRoblox上で知り合った友達とも、気軽にコミュニケーションに利用できることも魅力の一つです。
Roblox社は、ゲームタイトル自体を制作することはなく、ユーザーがより簡単に優れたゲームを制作しやすいツール・環境を整備することにリソースを集中させています。
この取り組みにより小学生でもゲームタイトルを簡単に制作することができ、大半のものは市販のタイトルよりも見劣りするクオリティである一方で、一部のタイトルは多数のユーザーを集めるヒットコンテンツとなっています。このように一般ユーザーによって制作されたコンテンツはUGC(User Generated Contents)と呼ばれます。
UGCを活用したサービス例として、ユーザーからの投稿によって構成されるInstagramやYouTubeなどのSNSが挙げられます。
Robloxは、ゲームをプレイするだけでなく、クリエイターとしてゲームを作りたい人も楽しめます。Roblox専用の「Roblox Studio」というソフトを使って、無料でゲームを作ることが可能です。
「Roblox Studio」にはあらかじめゲームの場面やオブジェクトのテンプレートが用意されているため、小学生でも直感操作で作成することができます。また、作ったゲームはRoblox上に公開することができ、世界に向けて自作したオリジナルゲームを公開できるのも魅力のひとつといえるでしょう。
Robloxでは、「Robux(ロバックス)」というゲーム内仮想通貨があり、アイテムや特殊能力、アバター衣装などを購入することができます。
クリエイターとしてゲームを開発できるようになれば、ゲーム内に課金システムを組み込む、またはプログラムを販売することで収益化が可能です。多くのゲームタイトルが月額課金のプランを採用しており、さまざまな特典をつけることで課金プランに加入してもらうことに成功しています。
また、アバター向けのアイテムを制作・販売することで、ゲーム内仮想通貨「Robux」を獲得することができます。ゲーム内のアイテムやサービスの価格は一般的には5ドル程度、高いものでは1,000ドルを超えるものもあります。
Robloxは子供でも利用可能な開発環境が用意されているため、Roblox内でゲームを作るクリエイターおよびクリエイター予備軍の数は1,000万人以上に達し、2023年7月に発表された「Robloxでの経済活動に関する当社のビジョン」によると、Robloxのクリエイターは2022年には6億2,400万ドルを稼ぎ、最も稼いだクリエイター10人の平均収入はそれぞれ2,300万ドルで、上位500人のクリエイターのほぼ全員が少なくとも14万ドルを稼いでいると発表されています。
なお、ゲーム内で集めた「Robux」は現金(米ドル)に換金することができ、Robuxを現金化するためには、以下3点の条件を満たす必要があります。
・10万以上のRobuxを所有
・13歳以上
・Robloxプレミアムのユーザー
Robloxでは、多数のブランドとコラボしたワールド(区画)を展開しています。ここ数年、NIKEやGUCCIなどの世界的な有名ブランドが多数進出し、その世界観をユーザーに伝え、ユーザーとのコミュニケーションを取りながら、ブランディングやデジタルマーケティングに成功しています。これらの取り組みは「体験型広告」と呼ばれ、ユーザーは作り込まれたアトラクションやコラボグッズを楽しむことを通じて、ブランドへのロイヤリティを高めています。
また、Robloxでは、2023年よりメタバース上にイマーシブ(没入型)広告の本格導入を推進。世界に進出したい日本のブランドやコンテンツが、180の国や地域のユーザーを抱えるグローバルプラットフォームであるRoblox上で体験を提供し、ユーザーの反応を見ながら世界市場での成功戦略を練ることができます。説明だけでは伝わりにくかったことを、3D没入型メディアでの体験を通じて直観的に伝えられる点も大きな魅力です。企業が顧客とまったく新たな関係を結ぶ場として、Robloxが秘める可能性は大きいといえるでしょう。
ゲームプラットフォームとして知られているRobloxですが、教育分野への活用も期待されており、欧米ではすでに多くの教育現場でプログラミング教育として活用されています。
先述した通り、Robloxはゲーミングプラットフォームである前に、子供たちがプログラミングやゲーム作りを学べる教育目的のプラットフォームでもあり、そのために必要なツールや環境を基本無料で提供しています。これは、Robloxの共同創業者の1人であるDavid Baszucki氏が元々教育関係の事業をしていた経歴があり、Robloxの機能においても教育的側面に力を入れていることが背景にあります。 Robloxのゲーム制作ツール「Roblox Studio」は日本語表示に対応し、多彩なテンプレートからゲーム制作を始められます。ゲームへのオブジェクトの追加や編集が直感的に行え、ゲーム全体や個々のオブジェクトは「Lua」という言語を使ってプログラミングが可能。プログラミングに用いるエディターは予測入力やエラーチェックなどの機能があり、スペルミスに悩まされることなくプログラムを書くことができる上に、他のユーザーが公開しているモデルや音を追加することも簡単にできます。このようにただゲームをプレイするだけでなく、遊びながら学べる点も魅力の一つといえるでしょう。
Robloxは、企業の新たなマーケティングプラットフォームとして注目を集めています。ここからは、Robloxがどのようにビジネスに活用されているのか、具体的な活用事例を紹介します。これらの活用事例から、自社でもRobloxを活用するヒントを得ることができるかもしれません。
2021年11月にリリースされた、有名スポーツブランド「NIKE」の公式ゲーム「NIKELAND」。「NIKELAND」はNIKEのバーチャルテーマパークともいえる空間で、鬼ごっこやドッジボール、バスケや陸上競技など、さまざまなゲームをプレイできます。また、NIKEのファッションアイテムが展示された「バーチャルショールーム」も設置されており、アバターにNIKE製品を着せることができるのも魅力です。
2022年2月には、NBAのスター選手であるレブロン・ジェームズ氏が「NIKELAND」を訪れるイベントを開催。Roblox上でバスケや体を動かすミニゲームをプレイし、NBAファンやRobloxユーザーとのコミュニケーションを図りました。
2022年3月のNikeの発表によると、195カ国から約670万人ものRobloxユーザーが「NIKELAND」を訪れたとのことです。
「GUCCI TOWN」は、あの有名ファッションブランド「Gucci」がROBLOX上にオープンした広場です。「GUCCI TOWN」では、縄跳びや障害物レースなど全10種のミニゲームや、アバターが自撮りできる撮影スポット、ミニゲームで獲得したポイントでGUCCIのデジタルファッションアイテムの購入ができるラグジュアリーなショップなど、GUCCIブランドを余すことなく楽しむことができます。
GUCCIは「GUCCI TOWN」のリリース以前、2021年からROBLOXに参入しており、1年間で3,500万人以上のユーザーがGUCCIのリリースした「GUCCI TOWN」を訪れています。
2022年6月にオープンした「ジバンシイ ビューティ ハウス」では、アバターを通じて、ユーザーひとりひとりの個性と美しさを最大限に表現できる場を提供しています。
プレイヤーは、メゾンの貴族的な伝統を想起させる城の庭園へと招き入れられます。その中心部から、ブランドを象徴するアイテムから着想を得たダンスフロアや地下鉄の駅を再現した地下空間のほか、メイクアップステーション、フォトブース、プールなどにアクセスすることが可能です。プレイヤーは、ダンスや探索、メイクアップをすることにより、ファッションアイコンを獲得できる他、アバターにメイクアップを施したり、バーチャルアクセサリーをつけたり、メイクアップコンテストに参加することができます。
今回のローンチについて、ジバンシイ パルファムの最高経営責任者Romain Spitzer氏は、「大胆さを体現するブランドとして、ビューティ業界初の試みにチャレンジすることは大事なこと。未来の消費者にアプローチするためだ」と語っています。
2022年5月に音楽ストリーミングサービス「Spotify」がリリースした「Spotifyアイランド」は、アーティストやファンが交流できるバーチャル空間です。
「Spotifyアイランド」では、マップ上でクエストをクリアしたり、限定のコンテンツをアンロックしたり、アーティストたちと交流したりすることができます。また島の各地には、音楽のイースターエッグ(隠し要素)も仕込まれています。また、バーチャル・ビートメーカー・ステーションで音楽を制作し、サウンドを探求することも可能です。
ハート型の「いいね!」アイコンを集めて無料グッズを入手することができる一方、有料で販売されるグッズの売上の一部はアーティストに還元されます。
Spotifyでは、今後はより多くのアーティストとコラボレーションして、ゲーム内のバーチャル商品を作れるようにすることを目指しており、ファンとアーティストの新しい交流空間として注目を集めています。
アメリカの人気ファッションブランド「Tommy Hilfiger(トミーヒルフィガー)」が2022年に公開した「TOMMY PLAY」。
「TOMMY PLAY」では、ウイングスーツを着て大都会の空を滑空したり、BMXゲームをプレイしたりと盛りだくさん。バーチャル世界で本格的なレースも楽しめるため、友だちと競い合って楽しめます。トミーコインを集めてトミージーンズのファッションアイテムや、ゲームアイテムのアップグレードや交換を行うことができます。
Tommy Hilfigerは積極的にデジタルファッションの領域に挑戦しており、2022年9月に開催されたニューヨークファッションウィークではRobloxでライブ配信を行い、最新コレクションに身を包んだアバターがRoblox上のランウェイに登場したことで大きな話題を呼びました。
2022年4月にRobloxで公開されたSEGA公認のミニゲーム「ソニックスピードシュミレーター」は、同年8月に累計プレイ回数が5億回を突破したことで大きな話題を呼びました。
このプレイ回数は、2022年に公開された「ROBLOXゲーム」の中で最多を記録しています。
「ソニックスピードシミュレーター」は、Roblox内のコースを高速で走り、アイテムをゲットしてレベルを上げていくゲームです。友達とレースをしたり、ナックルズやテイルズといったおなじみのキャラクターたちを解放したりと、ボリューム満載のタイトルです。
2022年8月に日本で公開された新作映画「ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ」に合わせて、Robloxゲーム「ソニックスピードシュミレーター」の日本語版提供を行ったことにより、「ソニックスピードシュミレーター」のユーザー数を最も伸ばした国は日本になりました。映画コンテンツとRobloxゲームを組み合わせたマーケティングで成功した事例の一つといえます。
国内からはサンリオが2022年4月に参入し、店舗経営が楽しめる公式ワールド「マイ・ハローキティ・カフェ」を開設。同年末の時点で、同ワールドの訪問回数は1億7,000万回を超えています。
このカフェワールドでは、ハローキティと一緒に店を経営して成長させることができるというもので、サンリオお馴染みのキャラクターたちも登場。キッチンカーの状態から始まりますが、徐々に売り上げを伸ばしていくと実際の店舗を出現させられます。また、店内のテーブルや椅子の配置は自分で決められます。店舗で働くメンバーは、ガチャで決まるシステムで「ポムポムプリン」などが当たる場合もあるようです。
2023年11月からはROBLOXでもハローキティ50周年のスペシャルな企画がスタート。Y2Kを意識した女子高生風のハローキティのアバターアイテムやエモートが登場予定で、キティのエモートは、YouTubeで人気のコンテンツ「ポップコーンマシーンの歌」で披露したお馴染みの“お尻フリフリ”を楽しむことができます。また、キティコスチュームでキティデザインのフレームの写真を撮れる、キティ尽くしなフォトブースが2台新設されます。
Robloxは、家族や友達と一緒に、ブランドの作ったワールドでの体験を共有して楽しむことができるのが新しい魅力です。今回ご紹介した事例以外にも、さまざまな企業が業種問わずRobloxを活用したマーケティング/ブランディングに取り組んでいます。
日本国内でもRobloxは人気YouTuberによるゲーム配信や企業コラボなどで話題になることも多くなってきており、日本国内の企業や自治体でもRobloxに注目し、参入する企業が増えて始めています。
Robloxを活用した広告やマーケティング施策、Roblox公式ワールドの制作に関するご相談は、お気軽にトランスコスモスにお問い合わせください。
著者
メタバース情報局編集部
メタバース情報局 by transcosmosはトランスコスモス株式会社が運営する法人向けメタバース情報メディアです。メタバースを活用したビジネスの事例やノウハウ、最新情報、バーチャル体験など、メタバースの魅力をお届けします。ビジネスシーンにおけるメタバースの活用や、導入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
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