2023/11/04
近年、メタバースという言葉をメディアなどでよく耳にするようになりました。ゲームなどのエンターテイメント分野だけでなく、ビジネス分野での活用も進んでおり、今後、発展していく分野として注目されています。その一方で、現在の市場規模や将来の見通しはどのようになっているか気になる人も多いのではないでしょうか。
今回は、メタバースの市場規模についての現状と、将来の予測を紹介するとともに、メタバース市場が拡大していく上で必要と思われるポイントや、ビジネス活用についても解説します。
メタバースの市場規模は国内・海外共に拡大しつつあり、これからも大きな成長が予測されています。具体的なデータをもとに、紹介していきましょう。
総務省が2022年に公表している「情報通信白書令和4年版」によれば、世界のメタバース市場は2021年時点で4兆2,640億円。2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予測されています。 また、2022年6月にマッキンゼー・アンド・カンパニーが公開したレポート「Value creation in the metaverse」では、2030年までに本格的なメタバースの時代が到来し、約650兆円の市場規模に達すると予測しています。
矢野経済研究所は2023年8月、「メタバースの国内市場動向調査」を実施。その結果、2022年度は前年度比173.6%の1,377億円と推計。2023年度は同207.0%の2,851億円まで成長する見込みで、2027年度には2兆円を超えると予測しています。 また、トランスコスモスでは2022年10月と2023年4月に「メタバースに関する消費者調査」を実施。15歳以上の男女約1,300人にインターネット調査を行った結果、どちらの年も「メタバースを利用したことがある」と答えた人は、全体の約25%という結果となりました。
メタバースの利用用途は男性・女性ともにゲームが増加しました。特に女性は音楽・ライブ43%へ増加、コミュニケーションは37%へ大幅に増加しました。男性はほとんどの項目で増加しており、利用用途が拡大していることがわかりました。
前回と比較し、男性10代はゲームと教育・学校が増加し、男性20代はコミュニケーションが増加。男性30代はすべての利用用途で増加していますが、特に企業の展示会・イベントやコミュニケーション、ビジネス上の会議が大幅に増加しました。男性はビジネス・プライベートを問わず幅広い用途で利用されていることが伺えます。
一方、女性10代は音楽・ライブ、20代はゲームとコミュニケーション、30代はコミュニケーションが大幅に増加。なかでも20~30代の女性の半数以上が、メタバースでのコミュニケーションを行っていることがわかりました。女性の利用者はよりプライベートでメタバースを利用する傾向があるといえそうです。
コロナ禍以降、オンラインゲームは子供たちにとって、ネット上の公園のような役割を果たしています。オンラインゲームもα世代が多くのまとまった時間を使う娯楽であり、「友達とオンラインで喋りながらゲームをする」という遊び方が主流です。
「α世代」とは、2010年~2024年頃までに生まれる、Z世代の次の世代のことを指します。彼らの大きな特徴は、「スマホ、タブレットが既に世にある世界に全員が生まれている」ということ。そして、「小学校から必修科目としてプログラミングを学んでいる」ことです。まさに真のデジタルネイティブ世代だといえます。今はまだ幼いアルファ世代ですが、10年後には市場で大きな影響力を持つと見込まれており、α世代が消費の中心になる頃には、マーケティングの主戦場がメタバースに移る可能性があるともいわれています。
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メタバース市場は過去にも話題に挙がることがありましたが、なぜ現在になって、これから急速に成長すると予測され、注目を集めているのでしょうか。時代背景や技術の進化など、主な理由を見ていきます。
メタバースを支える技術が発達し、広く認知されつつあることが、メタバースに注目が集まる理由のひとつといえるでしょう。たとえば、メタバースへの没入感を高めるVR(バーチャルリアリティ)技術や、アイテムなどの売買に利用できるNFT(代替の利かないデジタルデータ)など、メタバースを支えるテクノロジーに対する注目度が高まりつつあります。
以前に比べてインターネットの通信速度やデバイスの性能が上がって、メタバースへのアクセスがより快適でスムーズになりました。そこに、新しい話題のテクノロジーがプラスされることで、多くのライトユーザーもメタバースに参加することが見込まれます。
オンライン会議やチャットなど、非対面の連絡手段が広く浸透したことで、コミュニケーションの在り方は変化しました。バーチャル空間で人と出会ったり、交流を図ったりすることへの抵抗感が薄れ、コミュニケーションの一手段として定着しつつあることは、メタバースの普及を後押しする要因にもなっています。
幼少期からデジタルデバイスにふれてきたデジタルネイティブにとって、メタバースは身近な存在です。例えば、メタバース型ゲームの代表格として知られる「Fortnite」は、PCや携帯ゲーム機だけでなく、スマートフォンでもプレイ可能。ゲーム内で友人と会話をしたり、新たな出会いや交流があったりする体験は、いまや日常的なものになりつつあります。
こうした体験を重ねて成長してきたデジタルネイティブが、メタバースを抵抗なく受け入れるであろうことは想像に難くありません。
メタバースは投資対象としても注目を集めています。ビジネス面では、国内・世界問わず、さまざまな企業がメタバース分野に投資をして、オリジナルサービスやプラットフォームの開発に取り組んでいる最中です。
その中で、メタバース関連銘柄の仮想通貨やメタバース関連の株式への投資が活発になっています。さらに、メタバース内の不動産投資やNFTといったデジタル資産への投資も行われるようになってきました。例えば、メタバース内の土地を購入した場合、現実世界の不動産取引と同様に地価が上下するため、将来価格が上昇すれば資産価値が上がる可能性があります。 投資対象として見た場合、メタバースはさまざまな可能性の宝庫といえるでしょう。
メタバース市場が今後さらに拡大していくには、技術の進化やユーザーのニーズや興味に合うコンテンツの登場などが求められます。メタバースの市場が拡大するためにはどのような条件が必要なのか、想定される主なポイントを解説します。
VR・AR(拡張現実)デバイスの性能向上や、アバターなどのデジタルデータを複数のプラットフォームで横断的に使用可能にする、標準化の取り組みなどが求められています。
ユーザーにとって、特定のサービスでしか利用できないツールは制約が多く、利便性が高いとはいえません。プラットフォームに依存しない仕組みの構築は、メタバース市場の拡大に向けた重要なポイントとなるでしょう。
多くのユーザーが関心を寄せ、実際に活用してみたいと感じるヒットコンテンツの台頭が求められています。一部の愛好家だけがメタバースの世界を楽しむのではなく、マス層に浸透することで市場は大きく成長していくでしょう。
ゲームだけなく、エンターテインメントやコミュニケーションに活用できるツールとして、広く親しまれるコンテンツの登場が期待されます。
アバターを介したコミュニケーションは、まだ多くの人に利用されているとは言い難いのが実情です。オンライン会議ツールやチャットツールを活用した非対面コミュニケーションは、わずか数年のあいだに広く浸透しました。それと同様に、アバターによるコミュニケーションが定着するかどうかが、メタバース市場の成長を左右する要因のひとつとなるでしょう。
現状、メタバースは多くの企業にとって先進的な取り組みである反面、収益に直結していないケースも少なくありません。マネタイズを実現する仕組みが確立され、継続的な収益につながるビジネスとして認知されるようになれば、企業によるメタバースへの投資が一気に加速するでしょう。
メタバースをいかにしてマネタイズしていくかが、市場拡大のカギを握る重要な課題といえます。
メタバースはゲーム以外の分野においても、着実に活用の幅が広がりつつあります。アイディア次第で、これまでの枠にとらわれないビジネスが出てくる可能性もあります。
続いては、メタバースが実際にビジネスで活用されている例を見ていきましょう。
従来はリアルの世界で開催されてきたイベントや交流会を、メタバース上で開催する動きが見られます。参加者はアバターを介してメタバース内の会場に出向き、イベントを体験したりほかのユーザーと交流を深めたりすることが可能です。
メタバースを構築するのは難しいですが、プラットフォームを利用すれば費用や手間は抑えられます。会場の確保や準備、開催地の選定といったプロセスを省略できる上、参加者も地理的要因に左右されることなく気軽に参加できるというメリットがあります。
オフィスや会議を、バーチャルに置き換える方法もあります。メタバース上に構築されたオフィスにアバターが出向くことで、バーチャルによる会議やコミュニケーションが可能です。アバターの動作や表情の細かな表現も年々進化しており、心理状況や細かいニュアンスを伝えることもできるようになってきました。ホワイトボード機能やファイル共有機能などを利用することで、現実のオフィス同様に会議を行うことも可能になっています。
オンライン会議ツールやチャットツールの進化で、明確な意思があるときにコミュニケーションを取る手段は定着しましたが、偶然会った同僚と雑談するなどの自然発生的なコミュニケーションの機会はいまだ限られています。メタバースを利用することで、オンライン上で自然発生的コミュニケーションの機会を増やすことができるでしょう。
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メタバース上に店舗を構築し、来店する客とショップスタッフがアバターを介してやり取りすることも可能です。メタバース内で使用できるアイテムなどを購入できることはもちろん、デジタルツイン技術を使用した商品を360度で確認したり、アバターで試着したりして、現実の商品を購入することも可能になっています。
実際に店舗へ足を運ぶ必要がないため、居住地や時間を問わず、世界のどこでもショッピングが楽しめます。
メタバースは、今後急速に拡大していくと予測されている市場であり、多くの企業や投資家から注目を集めています。企業による収益化と顧客獲得の実現、消費者が没入できるエンターテインメントやコミュニケーション方法の開発などにより、ゲーム以外の用途にもメタバースの活用が広がっていくことでしょう。
近い将来、巨大な市場になると予測されているメタバースは、大規模なビジネスへと成長を遂げていく可能性にあふれています。
著者
メタバース情報局編集部
メタバース情報局 by transcosmosはトランスコスモス株式会社が運営する法人向けメタバース情報メディアです。メタバースを活用したビジネスの事例やノウハウ、最新情報、バーチャル体験など、メタバースの魅力をお届けします。ビジネスシーンにおけるメタバースの活用や、導入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
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