close
コラム

2023/10/31

VR/ARとは?MR/SR/XRとの違いやビジネスへの活用事例

VR/ARとは?MR/SR/XRとの違いやビジネスへの活用事例

VR/AR技術は、ゲームや音楽ライブなどを中心としたエンターテイメントでの活用が目立つ一方で、ビジネス領域でも多種多様な業界においてVR/ARの活用が広がり続けています。近年では、VR/ARを活用することで、生産性向上やコスト削減、顧客体験やユーザーの利便性向上などに大きく貢献しています。

本記事では、VR/ARの意味や、MR/SR/XRといった混同されがちな技術の違い、国内外を問わずVR/ARを用いた業界別ビジネス活用事例を解説します。今後も市場拡大が予測されるVR/ARやメタバースを「どのように自社ビジネスとつなげるか」を検討している企業の方や知見を広げたい方は、ぜひご覧ください。

XR(X Reality)とは

XR(クロスリアリティ)とは、現実世界と仮想世界を融合することで、現実にはないものを知覚できる技術の総称です。そのため、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)といった技術は、いずれもXRに含まれます

1-1. VR(Virtual Reality)

VRは「仮想現実」と呼ばれ、仮想世界を現実のように体験できる技術です。専用のVRヘッドマウントディスプレイを使用することで、現実ではない仮想空間に自分が入り込んだような感覚を体験できます。全方位に仮想空間が広がっているように感じられるため、非常に没入感が高いのが特徴です。

画像引用元:株式会社HIKKY「MusicVket5」

ゲームや音楽ライブなどエンタメ業界で先行して活用されていたVR技術は、教育や医療、観光など幅広い分野で活用されています。

1-2. AR(Augmented Reality)

ARは「拡張現実」と呼ばれ、現実世界にCG映像を重ね合わせて体験できる技術です。スマートフォンなどを通じて、現実世界に仮想空間や仮想の物体などが現れたかのような体験ができます。ユーザーが体験する空間はあくまで現実世界をベースにしているため、VRより身近な技術といえるでしょう。

画像引用元:Pokémon GO

スマートフォンやタブレット、サングラス型のARグラスを通して見ることができるため気軽に体感することができ、個人で楽しめるゲームをはじめ、マーケティング、教育・訓練、観光などで多く採用されています。

1-3. MR(Augmented Reality)

MRは「複合現実」と呼ばれ、現実空間の形状をMRゴーグルが認識(空間マッピング)し、仮想オブジェクトであるホログラムをディスプレイに投影して、現実空間上に可視化する技術です。従来なら実物を用いてしか提供できなかった体験を、MR技術で代替することが可能になりました。ARが基本的に決まった角度からの映像でしか対象を見ることができないのに対し、MRは360度全方位から対象の3Dオブジェクトを見ることができ、さらに現実世界の物体を操作するかのように3Dオブジェクトを動かすこともできます。

画像引用元:Microsoft

CAD、CGなどのデジタル情報を利用した研究・設計現場でのシミュレーションや、医療、製造、建築分野などでの活用が進んでいます。

1-4. SR(Substitutional Reality)

近年、新しくXRの概念に加わったのがSRです。SRは「代替現実」と呼ばれ、専用のヘッドセットを装着し、現在と過去の映像を織り交ぜて表示することで、現実であるかのように錯覚させる技術です。VR/AR/MRの場合、ユーザーは仮想空間の情報を仮想だと認識しています。対してSRは、仮想と現実を織り交ぜることで、どちらが現実であるか認識できない状態を作り出し、現実世界を過去や仮想世界に差し替えることができるのです。まだ実用化には至っていませんが、今後の活用が期待されている新しい技術です。

VRとARの特徴

VRは、大きく分けると「視聴型」と「参加型」の2通りあります。「視聴型」は流れている3D映像を見るだけですが、顔を動かした方向の映像を見られるため、まるで仮想世界にいるかのような体験ができます。対して、「参加型」では、映像の中を自由に歩き回るだけでなく、映像内のものを触ったり動かしたりするなど、リアルな疑似体験が可能です。VR技術は、エンターテインメントや教育、医療現場での研修など、さまざまなビジネスにおいて活用されています。
一方、ARには、GPSやQRコード・画像認識技術を活用したタイプがあります。GPSを活用したARサービスの代表例は「ポケモンGO」です。また、「SNOW」や「Snapchat」のように顔面を加工しながら撮影できるアプリは、画像認識技術を活用したARの一例です。AR技術は現実とCGを組み合わせることによってシミュレーションできるため、最近ではファッションからインテリア、建設業界に至るまで、多種多様な業界でARの導入が進んでいます。
VR・ARは、あらゆるビジネスにおいて利便性を高めたり、顧客体験を向上させたり、人材育成や生産性を大幅に向上させる技術であり、より私たちの生活に身近なものへと変化しています。今後も活用の幅が広がることが期待されています。

VRのビジネス活用事例

エンターテインメント領域を中心に活用・導入が進んだVRですが、近年、ビジネスに活用する動きが活発化しています。仮想空間での体験は、リアルではできないことを可能にし、人の生産性を大幅に上げることが可能になるからです。今後、VR技術がどう進化し、近未来のビジネスや業務をどう変えていくのでしょうか。国内外の事例についてご紹介します。

3-1. 教育・学習支援:英グラスゴー大が「VR博物館プロジェクト」開始

画像引用元:University of Glasgow

2023年10月、英グラスゴー大学は、スコットランド国立博物館ほか2法人との共同で「バーチャル博物館」の開発に着手します。このプロジェクトはイギリス政府の研究開発振興プログラムに採択され、560万ポンド(約10億円、2023年10月18日時点)の予算が充てられます。本プロジェクトにはスコットランド歴史環境局、スコットランド国立博物館、ハンタリアン博物館(グラスゴー大学内)が参加し、VR教育サービス運営のEdifyが協力します。
グラスゴー大学によれば、博物館の収蔵品は全体の10%未満しか展示されておらず、距離や費用の制約から現地へのアクセスも限られています。しかし、新たなバーチャル博物館では、来館者が豊富な博物館、遺跡、オブジェ等にアクセスできるほか、キュレーターが「現実世界では一緒に配置されたことのないオブジェクトやバーチャル環境を用いて、豊かで楽しいストーリーテリングを構築する」としています。

3-2. 学校教育:Meta、米国15大学と「VR教育」の共同取り組み

画像引用元:Meta

Metaは2023年9月、没入型学習を積極的に取り入れている米国15大学との共同取り組みを紹介し、教育分野における新たなパートナープログラムを準備していることを表明しました。
「ニューメキシコ州立大学」は、学生が仮想の犯罪現場を調査する刑事司法をはじめ、さまざまな科目でVRを活用しています。「アイオワ大学」は、VRを使用してビジネス学生のソフトスキルトレーニングを支援しています。「パデュー・グローバル大学」は、病院のVRシミュレーションで看護師のトレーニングを行っています。「ノヴァ・サザン大学」は、VRを使用して医学部1年生に人体の臓器について教えています。「マイアミ・デイドカレッジ」ではバーチャルキャンパスを作り、音楽、建築、研究、化学、生物学などの分野でVRを活用したコースを教えています。

3-3. アパレル:Arlene WEB XRによる「COACH バーチャルショールーム」

画像引用元:ブレインバース

2020年12月、WEB XR を手がけるUS Arlene(日本総代理店ブレインバース)は、独自のWEB XR開発プラットフォームwebXR.toolsを用いた、WEBブラウザだけで手軽にアクセス可能なVRショールーム・ARサービスを開発し、提供をスタートさせました。大手アパレルや医療機器メーカーのバーチャルショールームで採用され、空間内での新たなショッピング体験とブランドPR、イベント集客、商品の購買率・返品率の改善に貢献しています。

3-4. アウトドア:NTTコノキュー、CAMP HACKと「VRキャンプ」

画像引用元:360Media

株式会社NTTコノキューは2023年4月、株式会社スペースキーが運営する国内最大級のキャンプWEBメディア「CAMP HACK」と株式会社マガジンハウスをパートナーに、「360Media」をリリース。ユーザーの好奇心に寄り添い、新たなライフスタイルと出会えることをコンセプトにしたVR空間です。多種多様なテーマを、より手軽にWebブラウザから楽しめます。
360Mediaの「バンライフ」空間では、キャンプ未経験者からアウトドアマニアまで、360度に広がるVRキャンプ場で没入感溢れるアウトドア体験ができます。キャンプ場到着からバンライフのメインとなる車中泊までの1日の流れを追体験することが可能です。CAMP HACKおすすめ商品を昼夜のアクティビティ別に見ることができ、空間に掲載した全商品が閲覧できるギアショップなどを楽しめます。

3-5. 観光:パリのノートルダム大聖堂 火災前の姿を「VR体験」

画像引用元:FlyView

2019年4月、長い歴史を持つパリの「ノートルダム大聖堂」で火災が発生し、寺院は大きく破損してしまいました。その翌年、パリ中心地にあるVR施設FlyViewにて「ノートルダム大聖堂の再建」というタイトルの18分のVR体験が提供開始されました。体験者はVRヘッドセットを着用し、回転するアームチェアに座って、鐘楼や屋根に設置されたガーゴイル像のクローズアップなど、火災前の大聖堂の姿を見ることができます。
VR体験の価格は19ユーロ(約3,000円)で、収益の一部はノートルダム大聖堂の再建に寄付されています。

ARのビジネス活用事例

ARは多くの企業が注目し、実際に活用した事例も多くあります。ARを活用することで、日常の世界にいながら非日常を味わえたり、イメージがわかりやすく伝わったりするなど、ユーザーが利便性を感じやすくなります。ポケモンGOをはじめ、多くのアプリが現実と仮想の組み合わせで新しいライフスタイルを提案しています。

4ー1. 寝具:新体験ショッピンを提供 ブレインスリープ「VR/ARサービス」

画像引用元:ブレインスリープ

ブレインスリープが手掛けるブレインスリープピローは、”速く、深く、脳が眠る。明日のパフォーマンスを目覚めさせる”枕です。ブレインスリープ初のメタバースコマースサイト「BRAINSLEEP VR ROOM」は、PCやスマホで空間移動やショッピングが可能なVRショールームと、スマホカメラで3Dを重ねて実際の商品サイズや質感・インテリアとの相性を確認できるARサービス、専門接客スタッフが睡眠プロダクトの良さや使い方を解説するバーチャル接客サービスを掛け合わせ、いつでもどこからでも自分に合った寝具を探す新体感ショッピングができます。

4ー2. 化粧品:マンダムのメンズコスメ「ARバーチャルメイク」

画像引用元:パーフェクト株式会社

株式会社マンダムのメンズコスメシリーズ「gatsby THE DESIGNER」の公式サイトに、2023年5月、「ARバーチャルメイク」が導入されました。「gatsby THE DESIGNER」は男性研究から生まれたベース&ポイントメイクアイテムです。公式サイトを訪れたユーザーが、ベースメイクやアイメイク、リップカラーなどの多彩なアイテムを自分の顔で試せるようになりました。
「ARバーチャルメイク」機能を提供したパーフェクト株式会社は、台湾に拠点を構えるテック企業。自撮りをするようにスマートフォンを自分の顔にかざし、試してみたい化粧品をタップするだけで、化粧品を使った際の仕上がりイメージが簡単に確認できます。パーフェクト株式会社の技術は、YouTubeやGoogle検索、Amazonなどの大手プラットフォームでの採用や、PinterestやSnapchatといったSNSでも活用されています。

4ー3. ファッション:Snapchat、H&Mと「AR試着」

画像引用元:snap

写真共有アプリ「Snapchat」やスマートグラスのSpectaclesなどを開発・販売する多国籍企業Snapは、スウェーデンのアパレルメーカーであるH&Mと、デジタルファッションのコラボレーションを開始しました。Snapのカメラ技術を活用し、H&Mの公式アプリ(Android/iOS)とSnapchatを通じて、3つの拡張現実(AR)上で衣服を試着することができます。
このAR体験は、H&Mとロンドンを拠点とするデジタル・アトリエ兼シンクタンク、Institute of Digital Fashion(IODF)が共同でデザイン・制作したもの。AR試着レンズにより、世界でたった一つのデジタルデザインを試着することが可能となります。誰もが衣服を選び、ポーズをとって、お気に入りのデジタルH&Mルックを共有することができるようになりました。

4ー4. 建設:ウッドワンの「ARキッチンシミュレーター」

画像引用元:WOODONE AR Kitchen Simulator

2023年9月、木質総合建材メーカーの株式会社ウッドワンは、新築キッチンの設置をWebARで試せる「WOODONE AR Kitchen Simulator」を開発しました。同社の特設サイトから無料で利用できます。x garden株式会社のEC向けVR/AR導入サービス「RITTAI」が採用され、来場促進や接客の効率化が期待されています。
「WOODONE AR Kitchen Simulator」は、さまざまなキッチンパーツを選択し、3D画像やARで表示できるWebサービスです。ユーザーのイメージに近い画像をもとに、扉の樹種やグレード、天板や水栓、シンク、食洗器の種類なども入れ替えられます。選んだ結果をもとに税込価格が自動で概算見積され、生成された3Dモデル(画像)はスマートフォン・タブレットを用いてAR表示が可能(PC非対応)。また、3Dモデルには個別のモデルIDが発行され、同社のショールーム「ウッドワンプラザ」に来場予約する際に、モデルIDを入力すれば現地で概算見積をもとにした提案も受けられます。

4ー5. 公務:救急隊員の「ARグラス」実証

画像引用元:宮崎県都城市

都城市消防局では、NTTドコモとの連携により、救急隊が傷病者を搬送し、病院で処置を開始するまでの時間短縮を図ることを目的に、救急搬送デジタル化事業の実証を2022年5月から開始。
現場の状況や傷病者の状態を医師や消防局に映像伝達するため、ARグラスを装着した救急隊員が出動します。撮影した映像は、消防局が現場状況をより詳しく把握したり、病院側が受け入れ態勢を整えたりすることに活用します。

まとめ

本記事では、VR/ARの違いや特徴、国内外の事例をご紹介しました。VR/ARは、ビジネスの世界で多くの可能性を秘めた技術です。VRは「リアルではできないことを可能にする」、「人の生産性を大幅に向上させる」ことが得意で、実体験に限りなく近いリアルな体験を提供できます。一方、ARは「情報をわかり易く伝える」、「顧客体験を向上させる」ことが得意で、ユーザーの利便性向上に貢献します。
ビジネスにおける新たな価値を創造するために、VR/AR導入に向けた取り組みを積極的に行ってみてはいかがでしょうか。VR/ARについてご興味のある方は、お気軽にトランスコスモスにご相談ください。

  • 著者

    メタバース情報局編集部

    メタバース情報局 by transcosmosはトランスコスモス株式会社が運営する法人向けメタバース情報メディアです。メタバースを活用したビジネスの事例やノウハウ、最新情報、バーチャル体験など、メタバースの魅力をお届けします。ビジネスシーンにおけるメタバースの活用や、導入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。

    このメディアについて

関連タグ

関連記事

人気記事

  1. TOP
  2. コラム
  3. VR/ARとは?MR/SR/XRとの違いやビジネスへの活用事例