2025/03/19
メタバースの企業活用を支援するトランスコスモスのメタバース領域のキーマンである光田刃氏にインタビューを実施。2025年のメタバースマーケティング戦略に迫ります。
トランスコスモス株式会社
メタバース推進部 エヴァンジェリスト 光田 刃
トランスコスモスのメタバース領域のプロジェクトをリード。メタバースを活用したビジネス、マーケティングの責任者を務め、幅広い企業・団体との協業を通じ、多数のマーケティング事例を手がける。
INDEX
光田: 今やフォートナイトやロブロックスは、単なるゲームの枠を超えて、多様なコミュニケーションが生まれるプラットフォームへと進化しています。2025年以降はユーザー数のさらなる増加や技術的進化、そして2024年の取り組みを踏まえて、メタバース空間でのマーケティングが一層盛り上がると見込んでいます。
当社は早い段階から企業や自治体と連携し、「メタバースで何ができるか」「どうビジネスゴールにつなげるか」というノウハウを蓄積してきました。今後はその知見を活かし、より幅広い業界にソリューションを提供していきたいですね。
光田: 渋谷未来デザイン様とは、フォートナイト上で渋谷の街や施設を再現し、社会課題にアプローチするプロジェクトを進めています。たとえば、ポイ捨てや落書きなどの迷惑行為を取り上げ、若年層や外国人向けに「迷惑行為はやめてほしい」というメッセージを発信しているんです。
渋谷区では以前からリアルなごみ拾いや啓発活動を行ってきたのですが、なかなか若い世代や外国人にリーチしにくい面がありました。そこで、彼らが普段から遊んでいるフォートナイトを活用し、世代に合ったマーケティング手法を試みた形になります。
光田: はい。イベント会場ではフォートナイトのプレイ体験と併せて、プロジェクトの背景や意義を紹介するブースを設置し、「ゲームは知らないけど渋谷の取り組みは応援したい」という大人の方も取り込めるようにしました。
結果として、子どもたちは社会課題を学ぶきっかけに、大人は「こういう形でゲームを活用できるんだ」と新鮮な驚きを得られる仕組みとなりました。フォートナイトのクリエイティブモードを知ることで、「ただ遊ぶだけじゃなく、自分でも何かを作り上げられるんだ」と気づく方が増えたのも大きな成果でした。
光田: 松井証券様では、フォートナイト上にオリジナルステージを構築し、コンテンツを活用して新規顧客層の口座開設につなげることに成功しました。若年層や投資に馴染みのないユーザーに対しても、ゲームの流れで投資や証券口座に興味を持っていただけた点が大きなポイントですね。
「ゲームを楽しんだあとで公式サイトにアクセスする」という自然な導線を作ることで、投資に抵抗を感じていた層にもアプローチできました。他業界にも応用しやすい成功事例だと思っています。
光田: 農情人様とは、ロブロックスを活用して農業の魅力や農村地域の課題を発信する試みを行っています。若い世代からは「農業って遠い存在」というイメージがあるかもしれませんが、ロブロックスの世界で作物の育成や収穫を体験できるようにすることで、興味を持ってもらう仕掛けを作りました。
一方、HIS様との取り組みでは、フォートナイトを使った観光促進企画を展開しています。旅行会社として、新しいオンライン旅行体験を提供するのが狙いで、ユーザーがゲーム内で仮想ツアーを楽しみながら、実際の観光地にも興味を持っていただく導線を作っているんです。
いずれも「従来とは異なる切り口で、ユーザーに体験してもらう」ことで、業界の課題を面白くクリアしていこうという事例ですね。
HISと提携し、Roblox上でシンガポール体験型ゲームを制作
光田: UGCは今後のマーケティングにおいて、非常に大切なキーワードだと思っています。ユーザーがブランドやテーマをもとにコンテンツを作り、それを拡散していくことで企業や自治体のメッセージが広がるんです。
実際に渋谷未来デザイン様のプロジェクトでは「ゲームを募集する」という取り組みも行っていて、多様な視点や技術が集まりました。私たちには思いつかない斬新なアイデアもたくさん出てきて、審査が難航するほどでしたね。2025年に向けても、こうしたUGCを推進し、ユーザーと共創するマーケティングを加速させたいです。
SHIBUYA Good Manner大賞「EcoWars(エコウォーズ) in Shibuya SGH」
光田: いわゆるプレイ動画や生配信が伸びやすく、インフルエンサーとコラボすることで一気に拡散しやすいのが強みですね。渋谷未来デザイン様のプロジェクトでも、ゲーム系インフルエンサーが配信したことでオンライン上がかなり盛り上がりました。
ユーザーが「ゲームで体験したことをシェアしたい」と自然に思える設計がしやすいのも魅力です。インフルエンサーとの連携は、今後ますます重要になってくるでしょうね。
光田: 2025年には、フォートナイトやロブロックスを活用したメタバース空間が企業・自治体にとって「当たり前のマーケティングの場」になっていくと考えています。特に以下の点を強化していきたいですね。
ハッカソンやアイディアソンを通じて、ユーザーと共に企画・運営を育てる仕組みを拡充する。
ゲームやSNSで影響力をもつクリエイターとの連携をさらに深め、イベントやコンテンツの波及力を 高める
ゲーム内でキャラクターを展開し、新たなマーケティング場所を確立。ファンコミュニティとの相乗効果が期待できる。
オフライン会場とメタバースを連動させ、初めて会う人同士でも気軽に交流し合い、社会課題やブランドの意義を共有する機会を増やしたい。
私たちは**「ユーザーが体験の主役になるマーケティング」**が新たなスタンダードになると確信しています。ゲームに不慣れな方でも意義を理解して気軽に参加し、応援できる環境づくりが私たちの目指す未来像です。
フォートナイトやロブロックスといったメタバースプラットフォームは、従来の“ゲーム”の枠を超えて、多様な人々が交流し、企業・自治体の情報発信を強力にサポートする舞台となりつつある。
渋谷未来デザインの事例では、社会課題を楽しく学べるだけでなく、ゲームクリエイトの可能性を広く伝える取り組みに成功。松井証券のように新規顧客の口座開設につなげた事例もあり、応用可能な領域はどんどん広がっている。
さらに、農情人がロブロックスで農業の魅力を発信したり、HISがフォートナイトで仮想ツアーを展開したりと、従来のイメージを覆す取り組みも加速中だ。2025年にはIP企業とのコラボも含め、ユーザーが主体的にメタバース体験をつくり上げ、共感を深め合う――そんな時代のマーケティングが本格化しようとしている。
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