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活用事例

2024/02/27

【対談】神奈川大学初!『第3回みなとみらい祭』リアルとメタバースのハイブリッド開催を実現

【対談】神奈川大学初!『第3回みなとみらい祭』リアルとメタバースのハイブリッド開催を実現

2023年10月28日(土)と29日(日)の2日間にわたり、神奈川大学みなとみらいキャンパスで開催された『みなとみらい祭』。
第3回目となる『みなとみらい祭』は、神奈川大学初のリアルとメタバースのハイブリッド開催を実現し、来場者数は2日間で7,600人。メタバース会場では「神奈川大学を知る」というコンセプトで、遠隔地の高校生に神奈川大学を知ってもらう、興味を持ってもらうことを目的に開催されました。コロナ禍でオンライン開催を余儀なくされた昨年より約2,000人も増加し、大盛況のうちに終えることができました。
神奈川大学に協賛したトランスコスモスの光田と、神奈川大学みなとみらい祭実行委員兼メタバース部部長の佐藤景士さんが、みなとみらい祭の概要や、メタバース活用における学びと課題、メタバースの活用法について語ります。

トランスコスモス株式会社 CX事業統括 メタバース推進部副部長 光田 刃
神奈川大学 国際日本学部 日本文化学科3年 みなとみらい祭実行委員兼メタバース部部長 佐藤 景士さん

――『神奈川大学みなとみらい祭』の実行委員とメタバース部の役割は?

佐藤:私の役割は大きく2つあります。大学祭の企画全体にアプローチをかけていく<企画局副局長>と<メタバース部部長>です。プロジェクトが佳境に入る中で新たな作業が加わり、いろんなところの調整に入り、且つ、判断も必要で、コンスタントに休む時間がないという形でやらせていただきました。実行委員は3年生の大学祭が終わると引退です。

――メタバースを活用した経緯と協賛した経緯について

佐藤:実行委員長から聞いた話になりますが、トランスコスモスさんから話をいただいて、新しい取り組みとして“メタバース”というものが最近注目されていると。みなとみらいキャンパスは近未来なイメージがあり親和性が高い点と、おもしろそうだなという点で活用できればいいかなと思いました。

光田:弊社が協賛した経緯ですが、元々は大学生協の方と、入学のブランディングで活用できないかというお話をしていました。そこでたまたま『みなとみらい祭』が行われるというのを聞いて、それならば学生さんと一緒にメタバースを活用して、Z世代やα世代が本当に興味を持ってくれるのか?新たなコミュニケーションツールになり得るのか?について検証してみようと思い、協賛を決めました。

佐藤:みなとみらい祭の実行委員長からお話をいただいた時に、実は軽い気持ちで引き受けてしまったのですが、話が進んでいくにつれて事が大きくなっていって、トランスコスモスという企業を調べたら大企業で、気づいた時には「やばい!もう後には引けなくなっている」状態で(笑)、事の重大さを実感するようになったというのが率直な感想です。トランスコスモスのメタバース推進部の皆さんは、メタバースを社会に広めていく人たちなのかなというのが最初の印象でした。

光田:学生の皆さんは「こんなことできたらいいよね」という夢が広がっていた印象を受けました。大学や企業が主体となって世に出していく時に、メタバース空間だけ作って終わりであれば何の意味もないものができあがるので、「運用として何をしたいか」「成果として何を出したいか」を考えてやっていくのがいいという話をしました。メタバースはまだまだふわっとした世界で語られたり、認識されたりすることが多いんだろうな、という印象を受けました。

――メタバースを使う前と使った後の印象の違いは?

光田:佐藤さんは大学祭でメタバースを活用する以前に、メタバースを使ったことはありましたか?

佐藤:以前、マインクラフト(ブロックでワールドを作るメタバースゲーム)をやっていた時期はありましたが、それをメタバースとして認識してやっていたというよりは、“みんなで集まってゲームをする場所”くらいの感覚でやっていたので、知らず知らずのうちに使っていたかもしれません。

光田:佐藤さんの周りでメタバースを使っている人はいますか?

佐藤:「今度メタバースを使って大学祭でこういうことやるんだ」と友達に話をした時に、「メタバースって何なの?」と。でも、Fortnite(フォートナイト)でゲームをしているんですよね。知らず知らずのうちにメタバースをやっているけれど、メタバースが何かを理解していない、そういう人が多い印象です。私は細田守監督の『サマーウォーズ』という映画が大好きで何度も見ていますが、サマーウォーズに出てくる「OZ」の世界観が一番メタバースっぽいなと思っていました。近未来によく出てくるもの、という感覚でいたので、まさかこんなに身近なところにあるとは思ってもみなかったです。

光田:実際に大学祭でメタバースを活用することになって、3DCGと2Dメタバースの2つにトライしましたよね。

佐藤:元々は3DCGメタバースのみで行う考えでしたが、キャパシティの問題、つまりその空間に多くの人数を入れられないという問題が発生したので、より多くの人を入れられる2Dメタバースの活用も検討しました。その中で、2Dメタバースだけでいいという議論も行われましたが、一般の人が考えるメタバースというものが3DCGではないかと考え、多くの人が考える“メタバースらしさ”を追求した時に3Dも必要だよねというところで、どっちもやろうという結論に至りました。

光田:今回、我々は学生の自主性に任せたので、そういう考えでやるのはいいと思っていました。3DCGの制約があるからこそ2Dメタバースも活用しましたが、実際に3DCGと2Dを使ってみて、使い勝手はどうでしたか?

佐藤:2DはTPS(サードパーソンシューティング:三人称視点)でモノを見てアバターを動かすという点で、周りの状況の把握のしやすさがある。たとえば、ちょっと遠くにいるメンバーに話しかけにいきやすいですよね。一方、3DCGだとFPS(ファーストパーソンシューティング:一人称視点)になってしまうので、どうしても遠くにいる人を探しにくい。ただし、その分の没入感はあります。使い勝手という点では、短期的にイベントとして使うのであれば3DCG、バーチャルオフィスなど長期的に使うのであれば2Dの方が使いやすいのかなと感じました。

――3DCGの制作と3DCG講習を実施しようと思った理由

佐藤:そもそもメタバース会場で3DCGのワークショップをやろうと思ったきっかけは、キャラメイクがしたい、自分だけのアバターを作りたいという声があがったことです。3DCGメタバースプラットフォームの「V-air」を使うとなると、「VRoid Studio」という3DCGアバターを制作するソフトを使わないとできないことがわかりました。自分だけのキャラクターで3DCG空間を自由に動き回るというのは1つ魅力だと思いますので、3DCGのワークショップという形で、学生が高校生に教える機会を作れればいいかなと。また、実際に3DCGソフトのBlenderを使って、ワークショップの教室や椅子や机を作ることになり、ここから先は自分たちの手だけではどうしようもできないので、トランスコスモスさんにその道のプロをご紹介いただきました。

光田:基本的には、学生さんが何をやりたいかというところに対して支援するというスタンスに徹したので、そういう話をいただいて、じゃあそこは3DCG講座を主宰している梅原さんがいいねと。プロジェクトを進めるために、道に躓いたら助けられる人たちをアサインしたというのが、我々がやってきたことですね。実際に3DCGを制作して、いかがでしたか?

佐藤:私が思っていたより、すんなり進んだという感じでした。メンバーたちがやる気になって主体性を持ってやってくれたので、最初はうまくいったかなと。そこからが難しかったところで、制作した3DモデルをいざV-airの中に入れる時に、入れられる容量が決まっているんですね。全体で120MBまでしかデータを入れられないのですが、それをオーバーしてしまいまして、ひたすら試行錯誤しました。私自身は全体の制作総指揮を執ることに徹していましたが、たしか3週間でやり切ろう、そうしないと間に合わないよね、という感じだったかなと思います。

――メタバース大学祭での学びと課題について

佐藤:学びの1つは、メタバースとは何なのか。今までふわふわしていたものが、しっかりメンバーそれぞれの中に軸ができ、「メタバースってこういうものなんだ」と結論付けられたこと。もう一つは、一人の大学生として企業の人とプロジェクトを進めるという経験です。そう簡単にできるものではないので、勉強になりました。

光田:学生さんがチャレンジすることや、新しい取り組みをすることはとても重要で、結果として「こうした方がよかった」「こういうところは伸ばそう」というのは、実際に取り組んでみなければわからないこと。そういった機会を我々が提供できたのはよかったかなと思います。一方で、課題はありましたか?

佐藤:大学祭として見た時に、メタバース会場への来場者数はまだまだ課題ですね。知らず知らずのうちにゲームなどでメタバースに触れてはいるけれども、メタバースとして銘打った時に、そこに参加しようという人がまだ少ない。今回はリアルとメタバースのハイブリッド開催でしたが、メタバースの実制作や運営はメタバース部の10人程度で行いました。メタバース会場の規模を大きくできれば、やれることも変わっていただろうし、また違った結果になったと思っています。

光田:では、佐藤さんが考える成功した点と失敗した点を教えてください。

佐藤:この短期間、このクオリティで企画を成立させることができたというのは、成功体験として一番大きいと思います。失敗した点は、成立させることはできても、そこから集客するというのがすごく難しかったです。高校生が情報として見るのは神奈川大学のホームページやSNSなので、大学祭のSNSをもっと使えばよかったなと。しかし、お客さんの肌感や年齢層などを見ると、ターゲットや大学祭との相性はいいと感じました。

光田:学生さんたちが自分たちで新しい企画を作り上げて、大学や大学関係者、高校生に向けてブランディングのために活用したことは成功だと思います。集客の課題については、学生さんたちの自主性に任せているとはいえ、検証しきれなかったと感じている部分もあるので、次回実施するのであれば、そこはこだわりたいと思っています。一方、大学側からの評判はいかがでしたか?

佐藤:初めて3DCGが完成したタイミングで、内々にお披露目をしました。幹部会で報告をした際に「よくこれを作ったね!」という感想をもらえたことが非常に嬉しかったです。メンバーが椅子の一つひとつのパーツまでこだわりを持ってやってくれたので、それが評価としてつながった瞬間でもありました。また、学長がお見えになった際に、今回の取り組みを説明し、「すごいね!こういうこともできるんだ!」と仰っていただいたのは、メタバース部として評価していただけたのかなと思います。

光田:後輩たちからの感想は?

佐藤:今年メンバーだった内の2人が副委員長になりまして、今年の自分よりも役職としては2つ上になりますが、「何としてでも来年もメタバースをやるんで」と言ってくれたこと、その熱意は嬉しいですね。

光田:メタバースはまだ社会実装されているわけではなく、この社会変革をどう浸透させていくかという段階で、使っているユーザーがアップデートさせる世界観が正しいと私は思っているんですよ。メタバースを来年の大学祭でも使いたいと仰っていただけるのであれば、また是非一緒にやりたいなと思いますね。

佐藤:まずは今年メタバースとしてやったものをフィードバックして、アップデートしていく形でできればと考えています。

――教育機関におけるメタバース活用法について

佐藤:みなとみらいキャンパスは「ビル型キャンパス」で、許可なしに大学に入るのが非常に難しいんですね。そこを自由に開放できる空間としてメタバースを活用できればと思います。また、Zoomではできないようなディスカッションもメタバースなら可能になるので、授業そのものに活用することができればいいですね。

光田:そうですね。トランスコスモスでは、企業や自治体、教育機関においても、Fortnite(フォートナイト)やRobloxを活用することを推進しています。メタバースの世界が広がると言われているのはUGC(ユーザー生成コンテンツ)が作れることにあります。UGCは自己表現の一つであって、誰もがコンテンツを作って投稿して、それが遊ばれて、お金も入ってくる仕組みがあるのですが、そういった仕組みをうまく活用した方がいいと考えています。たとえば、Fortnite(フォートナイト)でトランスコスモスがゲームを制作して、Z世代やα世代に遊んでもらって、トランスコスモスのことを認知してもらう。企業や自治体がFortnite(フォートナイト)やRobloxで取り組みをすることによって、何かしら興味を持つユーザーの子たちがいると思っているんですよ。あの企業が、こんなおもしろいことをやっている、みたいな。今や小学校でのプログラミング学習が必修化されていますから。

佐藤:すごく賛成といいますか、今後必要な言語で、やっていかなければいけないと思います。プログラマーとして直接使うタイミングがなかったとしても、そういう職業があるということを知ったり、それを介してコミュニケーションを取ったり、社会人になって確実に必要になると思うので、小学生から勉強しておくことは大事ですね。

光田:メタバースやゲームを作るのは、本来であればプログラマーやゲーム制作会社になりますが、Robloxで幼少期からプログラミング教育を学ぶことで、自分で想像した世界を簡単に作れるようになる。幼少期から想像力を身に付けていると、社会変革が起きた時に当たり前に対応できる人材になるのではないかと思いますので、日本でも教育がなされて、メタバースの世界が広がっていくのはいいことだと思います。

――最後に、大学の後輩たち、企業や自治体に向けたメッセージをお願いします。

佐藤:メタバースを使っていることが注目される時期から、徐々に「メタバースを使って何かをやる」というところに焦点が当たる時期に変化しています。メタバースを手段にして、別の目的を達成していくスタンスを持っていてほしいなと思います。

光田:本日、佐藤さんと対談し、神奈川大学に協賛してよかったです。企業や自治体の皆様には、神奈川大学の学生さんたちがトライしてくれたように、「目的」を決めて、まずはトライしていただきたいですね。トランスコスモスはメタバースのビジネス活用を企画・コンサルティングから、プラットフォーム選定開発、集客、コミュニケーション支援、データ利活用までをワンストップで支援させていただいています。2030年に向けて、ぜひ一緒にトライしましょう。一方で、メタバースのユーザーも育てなければいけないと感じていますので、トランスコスモスでは「みんなのメタバースコミュニティ」でユーザーの行動変容を促す取り組みを行っています。企業や自治体の取り組み支援とユーザーの支援だけでなく、社会変革を促すための仕掛け作りも行っているので、是非興味のある方はご相談ください。

(対談の内容は2023年12月時点のものです)

▼神奈川大学みなとみらい祭はこちらの「事例動画」もご覧ください。
みなとみらい祭で、学生が制作したメタバースを公開 【神奈川大学みなとみらい祭様事例動画】

▼対談はこちらの「ダイジェスト版対談動画」もご覧ください。
【対談動画】神奈川大学発『第3回みなとみらい祭』メタバース開催における学びと課題

  • 著者

    メタバース情報局編集部

    メタバース情報局 by transcosmosはトランスコスモス株式会社が運営する法人向けメタバース情報メディアです。メタバースを活用したビジネスの事例やノウハウ、最新情報、バーチャル体験など、メタバースの魅力をお届けします。ビジネスシーンにおけるメタバースの活用や、導入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。

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